前編
金が足りないな。私はふと思った。
そんな中たまたま町に出かけた時に客船のクルーを募集しているバイト紙を見つけた。
日給10万円で食事も出るのか。これだな!
私はフェル・マーリン。20歳を過ぎてもどこにも就職出来ないので仕方なく自らとある組織を作りそこで生活をしている31歳独身の一般男性だ。
本部に戻ると仲間たちに事情を伝えた。
そして面接を受けることになり、受かったのは私と科学者であるトム・ストーム、オックウ、パーソンを含めた計8名の精鋭だ。
バイト初日を迎えた私達はガーディ海を渡航するフワレ号に乗り込んだ。
「今日からよろしくね」
私達を最初に出迎えたのはバイトリーダーである中年の男ラムトリオであった。
彼は仕事内容である清掃を教えた。船の中は広くて大変そうだけどこのくらいやりがいがないと仕事とは言えんな。
「以上で説明は終わるよ。何か質問があれば事務室においで」
ここから仕事のスタートである。
バイトたちはそれぞれの持ち場へ去っていった。
さあ、頑張るでー。
私達は仲間のトム・ストームとデッキへ向かっていった。
朝日が眩しいぜ。
出航した船は速度を増してガーディ海を突っ走っている。天気が良く風が頬に当たって気持ちが良い。
ブラシを持ってデッキ磨きだ。
私はお客様を華麗に避けながらデッキをピカピカにしていく。
「隊長。見てくれ」
突然肩をどつかれて何事かと思ったがトム・ストームが何か用があるみたいだ。
彼は向こう側にいた団体客に向かって指を指した。
「奴ら政府の連中だ」
よく見るとただの客だと思っていた団体客の正体は政府の役員様だった。
政府とは分け合って仲がこじれているセンター本部。できるのであればこちらに気づいて欲しくない。
幸い向こうは私たちに気づく気配はなく今のところほっとしている。今のところはだが。
連中の中では真面目で正義感が強いで有名なアル・ジャスターもいた。
「うわっ。ど、どうしよ、、、」
緊張で心臓がうるさい。
「落ち着け。俺にいい考えがある」
いい考えなら是非とも聞きたい。
彼は小声のまま続けた。
「ここで真面目に仕事をして奴らに俺らのらの利用価値をアピールするんです」
「なるほど」
つまり我々の活動を認めてくれるチャンスになるわけか。
いい考えだストーム。
それからというもの私達は一生懸命に仕事に励んだ。彼らに仕事の頑張りを証明する為にラムトリオさんにもアピールをした。
「見てください。このトイレ。僕が掃除しました」
「うん。よく磨けてるね。綺麗すぎて今日からここが私の部屋でも不快感がないくらいだ」
ラムトリオさんは上出来だと言わんばかりに拍手を送ってくれた。
このまま上手く行けばセンター本部の連中がもっとうまい飯を食って生活できるかもしれない。
そう思うと心が舞踊った。
休憩時間になった。
私はスタッフルームで体を休めた。
「隊長隊長。せっかく海に来たんですし釣りでもしましょうよ」
仲間の1人であるパーソンが嬉しそうにしながら釣竿を持ってきた。
そんなものいつ作ったんだい。
「僕はいいけどここ海だし海里的な問題は大丈夫なのかい?というか釣る場所なんてあったっけ?」
「すみません。そういうのは詳しく無いので、、、」
パーソンは困った表情で首を振った。
「いや、大丈夫だよ。釣りスペースは私が手配しよう」
私たちの会話を聞いたラムトリオさんが割ってはいってきた。
「本当ですか?」
「おお、君たちが頑張ってくれているからご褒美だよ」
私とパーソンは互いにガッツポーズをして喜んだ。
隣ではぐったりとしているストームが「まだ動くの?」と面倒くさそうな目でこちらを見てきた。
あいつは誘わないでおこう。
私とパーソンとオックウとほか1名の仲間はラムトリオさんに案内され船のそこに位置する釣りスペースへ向かった。