06 3人の準備
「サリー様、召喚者との対話について、検討しましょう。
最初は、少年の状況、召喚先の情報、目的を伝えることが多いです。
そんなに多く話す必要はありません。」
「話す内容も考えるんですか。よくわからないです。」
「大丈夫ですよ。サリーさん、私とイーリスで、台本は用意しています。」
召喚のテンプレートに対応した台本をタローたちは、大量に保管している。
今回召喚されるものの特徴もわかっているので、台本のアレンジも簡単だ。
「ただし、暗記して、堂々と話していただく必要があります。」
「ずいぶん多いようですが、これ全部話すのですか。」
「いえ、最低限の量に厳選していますが、複数パターン用意しています。
すべて台本通りに進ませるのは、私たちでも難しいため、すべて暗記してください。
私とタローさんは、別の空間でサリーさんと召喚者を見守ります。
いざとなったら介入はしますが、
基本的には、サリー様にすべて対応していただきます。」
「うーん。少し時間をください。」
空中に台本が浮かぶと、台本がひとりでにめくられていく。
そして、最後まで、めくられるとぱたんと閉じて、サリーの手の中に戻った。
「覚えました。これで終わりですか。」
「いえ、タローさん相手に実践していただきます。」
「タローさんお願いします。」
「サリーさん、よろしくお願いします。
台本の棒読みですと、少年の心をつかむことができません。
世界の管理者としてふさわしい態度、話し方でお願いします。」
「わかりました。」
サリーとタローがそれぞれ椅子に座り、台本の内容に合わせて演技する。
イーリスは、
その様子を観察し、サリーの演技指導を行う。
「サリー様、愛が足りません。愛を持って接してください。
笑顔が固いです。もっと自然にです。そうです。
あと、もっと身振り手振りをつけ、体全体で話してください。」
サリーは、懸命にイーリスの指導に従い、そしてイーリスを納得させた。
イーリスはサリーに微笑みながら話しかける。
「もうよいと思います。見違えました。さすがサリー様です。」
「ありがとうございます。自信がついてきました。」
タローも納得しているように言う。
「今のお言葉も管理者らしく、気品と慈愛にあふれた印象を受けました。
これなら、少年に会っても大丈夫でしょう。」
「ありがとうございます。皆様のおかげです。」
こうして、管理者スペースでの準備が整った。
次回召喚される少年が登場します。