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正義の味方。
新しいシステムの親しみやすいネーミングを一般募集して、採用されたのがこれだ。
せめてもうちょっと何かなかったのかと定期的にあちらこちらで話題に上るが、かといって今更変更するわけにもいかない。いわゆる定番の話題だ。
今から三十一年前、日本はとあるシステムを取り入れることで大きく変化した。
その変化や仕組みは諸外国からも高い評価を得て、国際会議の場所での発言権が強くなったのは言うまでも無い。実際、反論や批評も出なかったわけではないが、そのシステムを取り入れたことでの利点は多く、最終的に日本への評価は今までに無い高評価となったのだ。
そのシステムというのは、国民全てに特殊なICチップを組み込むという事。
日本国憲法を基準にしてあり、それに違反した行動をとった場合、当事者にのみ聞こえる警告音が鳴る。そしてどの法に触れたのかが映像と共に記録されて自動通報されることになる。
そして、一番の問題点として長い事議題に上っていたのが、そのシステムが働いて犯した罪を裁いた後のこと。
その人物が、どれ程の罪を犯したのかが、周りから一目瞭然になる。
このチップを組み込む事で全ての国民は左目にセンサーを持つようになるのだが、その左目で罪を「見る」事が出来る。
全ての国民の頭上五センチ程上に浮いている白く透明がかった球体──こちらも一般公募で「しろたま」と名づけられ、正直微妙なネーミングセンスだと思うが定着してしまったものは仕方が無い。この名前と最後まで争った方は治安の悪さに後押しされて悪ノリがすぎた、所謂「シモネタ」なので「しろたま」の方がまだマシだ、とは神田の意見である。
さておき、罪が裁かれ、確定すると、「しろたま」に変化が現れ、罪状を左目で読み取る事が出来るようになる。
──つまり、犯罪者は晒される、ということだ。