2000年代の空気
2000年代は、
僕が小学生から高校に入学するまでを過ごした時だ。
僕が小学生に上がった時は、
確かまだ土曜の登校日も存在した。
土曜の学校が終わり、
友達と遊ぶ約束をして、
家に帰るまでのあの空気をまだ僕は覚えてる。
あの時は暑かった。
僕は帰り道、
コンクリートの地面ばかり見ていた気がする。
路肩のドブの蓋を一つ飛ばしで進んだり、
そのドブの蓋と蓋の間に唾をたらしたりしながら、
コンクリートの熱気を感じていた。
あの時は、
今より背も低く地面と顔との距離が近かった。
小学校の6年間通ったあの通学路。
朝起きて自分の布団を始点とし、
教室の自分の席に収まる。
その繰り返しの中に僕はいた。
今、
その道を歩くと、
地面より空が近くなった気がする。
実際には地面の方が近いのだが。
同じようにその道を歩いて行くと、
過去の昔の僕の残像が見えるような気がする。
小学校を囲む白いフェンスの前に来ると、
僕は立ち止まる。
小学生の僕の残像は僕を置いて、
いつもと同じように教室へ歩いて行く。
僕はそれを見守りながら、
あの日を懐かしむ。
小学校の中ではきっと今頃、
僕の残像が動き回っているのだろう。
小学校の先生をしていたおじさんから聞いたことがある。
生徒たちが帰った後、
夜の学校には子供達の声が聞こえることがあるという。
昼間の子供達の声の残響が残り続けているのだという。
もしかしたら、
あの時の僕の声もまだどこかで響いているのかもしれない。
それは家庭科室準備室かもしれないし、
体育館の倉庫かもしれない。
2000年代の10年間は長かったけど、
今思い出すのは、
僕の通学路だった。
あの暑い通学路の空気が僕にとっての2000年代の空気だった。