第61話「紅鶸色の懺悔」
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「ねぇ、アッシュ、人生のキャストは皆同じだって話知ってる?」
「どういう意味?」
花に水をあげるエノーラが、口ずさんでいた鼻歌を豆知識に変える。それに疑問符を浮かべ、首を傾げれば得意げに語り出す彼女がいた。
この日の空は透けるような青空だったような気がする。古すぎる記憶は鮮明なのに、青空だけが色褪せていて俺は違和感を覚えた。
「輪廻転生ってあるでしょう? 私も死んだら輪廻転生するんだけど、その時のキャストは何度生まれ変わっても同じなんですって」
「同じ?」
「そう。例えばそうね……今回は私のお父さんだった人が、来世では私の夫になるかもしれないし、私のお母さんが私の娘になるかもしれない。それはもしかしたら前世で起こったかもしれないし、今世と来世は同じ立ち位置で、運命が廻っているかもしれない。簡単に言えば、縁は切っても切れないってことなのよ」
その時は言っていることが分からなかった。けれども、それを理解する日は意外と早く訪れる。
火炙りにされる前日、彼女は俺に自らの罪を打ち明け懺悔したのだ。それは本当に衝撃で、彼女を一瞬憎いとも思ったが、すぐさまそれどころでは無くなった。
——ずっと一緒よ。
エノーラはその約束を端から守る気が無かったのだ。それを知ってしまった挙句、俺は大切な人を失ってしまった。
悪魔でも心は壊れる。それを危惧した彼女は、クレイグに俺の記憶を奪うよう頼んだのだろう。そして彼女は死ぬ前に俺に一つ魔法をかけた。
——アッシュが守りたいと思う人が出来て、その人が応じた時、一回だけ契約出来るようにしてあげる。
その言葉すら忘れてしまっていたのだが、つまるところ椿との契約はエノーラの予定調和だったことが伺える。あの日、結ばれた縁は偶然ではなく必然だったのだ。
クレイグは、それはもう喜んだことだろう。何百年と立ち直ることが出来なかった俺が主を見つけたのだから。時折、訪れては様子を見に来てくれていたのは、そういうことだったのだろう。それがエノーラとの契約だったからなのか、友人としての好意からなのかは分からない。それでも、エノーラ以外にも、俺を大切に思ってくれている人がいたことを喜ぶべきなのだろう。
けれども、俺の選んだ主は日を追うごとにエノーラに似ていった。
俺も薄々感じていたから、彼女と深く繋がってしまうことを危惧していたのだろう。傍から見ていたら、もどかしくも恐ろしかったに違いない。椿が不老不死を願うことを分かっていて、クレイグは種を撒いた。そしてあらゆる世界を巡って、彼女に気付いて欲しいと思ったのだろう。椿の愛し方の危険性を。
エノーラが俺にかけた魔法はもう一つあったのだ。それを知っていたからこそ、クレイグは事を急いた。
——エノーラより愛する人が出来たら記憶が戻るようになっていたから。




