表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
椿の花が枯れるまで【ノベル大賞2次落選作】  作者: 衍香 壮
第4章「魔法と特殊なカーニヴァル」
45/69

第44話「曙色の過ち」

「まだ詳しい話を聞いてなかったって感じね。あ、敬語はなくていいわよ。私も動転して外してしまったし」


「サラも能力者なの?」


「ええ。金属を自由自在に操れる能力を持っているの。まだ全然使いこなせてないんだけどね。ツバキは、どうしてサーカスに?」


「チェスターに連れられて。友達、なの」


「チェスターってことは……もしかして異世界から来たの?」


 やはり事情は折り込み済みか。色々と気を回したせいで、溜息を吐きたい気分になった。


「うん。それを知ってるなら何を話しても良さそうだね」


「同じくだわ」


 弾まなかった会話のせいで、ぎくしゃくしていた雰囲気が変わる。笑声を挟んだことで柔らかくなった空気に、私は更に笑みを零した。


「ずっと気になってたんだけど、彼も友達? もしかしてどこか具合が悪いの?」


「具合を悪くさせちゃったみたい」


「どういうこと?」


「私のせいなの。私がハッキリしないからアッシュが……」


 そこまで紡いで口を噤んだ。なんと言っていいか分からないし、上手く話せる気もしない。初対面の相手に話すには気が引けた。


「大丈夫よ。話して楽になることってあるでしょう? 私で良ければ聞くわ」


 白い髪に白い肌。柔らかな雰囲気と口舌はまるで聖母のようだ。実際にマリア様がいたのなら、こんな感じなのだろう。私はサラのしとやかな髪を横目に、そっと爪先に視線を落とした。


「……彼、アシュリーって言うの。私はアッシュて呼んでるんだけど。そうだな……私ね、アッシュが好きなの」


「うん」


「彼、悪魔でね」


「うん?」


「やっぱりココは受け入れられないか」


「ちょっと待ってね。あの人、悪魔なの?」


「そう。バーゲストって言って犬の容になるの」


「凄いわね、悪魔」


「でも疑わないんだ?」


「自分も超能力を使うのに疑ってどうするの? それにツバキの顔を見ていれば分かるわよ。ずっと一人で悩んできたんでしょう? 一人って辛いわよね。例え寄り添う人がいても、所詮、人は独り。寄り添ったからって全てを共有出来たりはしない。相手のことを分かったつもりでいても、それは所詮分かったつもりなのよ」


「サラ……?」


「ごめんなさいね。少し、犯した過ちを思い出してしまったの。続きをどうぞ」


 困ったように眉根を寄せた彼女がショールを直す。彼女も、ただの可愛い女の子じゃないのだと分かれば好感が持てた。


 同性の友人がいない私には、こういった時間が無かった為、些か緊張してしまう。威儀を正してから、彼の寝顔を今一度見やる。彼のいない場で言葉を紡ぐなど何年ぶりだろうか。そう思惟して、片時も離れなかった時間を思い出した。


 話したことがないのだなんて当たり前だ。例え、友人がいたとしても、私は話すことなどなかっただろう。彼に想いを知られてしまえば、どこかで何かが崩れるのは必須。一番が何かを考えれば、私が、その選択をすることがないのは明白だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ