第27話「赤紅の関係」
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「成る程。ツバキとアッシュは随分と歪んだ関係を続けているのですね」
「私の〝愛〟は私だけのもの。でも歪んでいるかどうかを決めるのは、イッカでも、他の人でもなければ、私でもない。相手だけよ」
「そうですね」
覚醒する意識と共に目を開く。頭は、やたら冴えていて、違和感なく言葉が繰り出せた。
「他の記憶はいいの?」
「ええ。ツバキが追体験している間に全て見てきました。どうやら連ねた言葉に偽りはないようですね」
「うん。私は嘘を吐いていないからね」
「悪魔を愛する人間というのは稀有かもしれませんね。貴女も十分、不幸を愛している。そしてツバキの記憶を覗いて思いました。僕は、どこの世界にも行きたくありません」
「どうして?」
「僕が探偵でいられなくなるからです」
「奇病が治ったらやめるつもりじゃなかったの?」
「この職業も悪いモノではないのですよ。それに苦しんでる人間を見捨てるのは、どうにも性に合わないのです。自分が辛い思いをしてきたせいでしょうか。……ツバキも大変でしたね」
「私はアッシュに出会えたから幸せよ」
「そうですか。誰かのもとにある幸せというのも、悪いモノではないのかもしれませんね。お手数をお掛けしました。それで貴女は三賢者を探しているのですね」
「なんでそれ……そっか、記憶を……そうね」
「僕が会ったのはクリッシー・マイヤーのみですが、特徴をお教えしましょう。無駄な時間を過ごさせてしまいましたから」
「いいの?」
「はい。口止めされてはいません。僕は次のウィッカを探してみようと思います。教える、と言っても僕もあまり知らないのですが、見た目は先程言ったように三〇前後。綺麗な出で立ちで、長春色の長い髪を左側に流していました。癖毛で、特徴的な髪型をしていたので会えば『ああ』となると思います。灰色の瞳で、快活な方でしたよ。僕が会った時はケープにショートパンツを合わせていました。どうやら美人が好きなようで、レ―ヴィのことも大層気に入っていたので、アッシュで釣れば食いついてくるかと思われます」
「イッカって、たまにえげつないこと言うよね」
「こういった性格なもので。それでは現実に戻りましょうか」
何かを言う間もなく奈落の底へと落ちていく。慌てて空をもがいていれば、再び目を見開くに至った。