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椿の花が枯れるまで【ノベル大賞2次落選作】  作者: 衍香 壮
第2章「心を侵された二人と奇病探偵」
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第27話「赤紅の関係」

 *


「成る程。ツバキとアッシュは随分と歪んだ関係を続けているのですね」


「私の〝愛〟は私だけのもの。でも歪んでいるかどうかを決めるのは、イッカでも、他の人でもなければ、私でもない。相手だけよ」


「そうですね」


 覚醒する意識と共に目を開く。頭は、やたら冴えていて、違和感なく言葉が繰り出せた。


「他の記憶はいいの?」


「ええ。ツバキが追体験している間に全て見てきました。どうやら連ねた言葉に偽りはないようですね」


「うん。私は嘘を吐いていないからね」


「悪魔を愛する人間というのは稀有かもしれませんね。貴女も十分、不幸を愛している。そしてツバキの記憶を覗いて思いました。僕は、どこの世界にも行きたくありません」


「どうして?」


「僕が探偵でいられなくなるからです」


「奇病が治ったらやめるつもりじゃなかったの?」


「この職業も悪いモノではないのですよ。それに苦しんでる人間を見捨てるのは、どうにも性に合わないのです。自分が辛い思いをしてきたせいでしょうか。……ツバキも大変でしたね」


「私はアッシュに出会えたから幸せよ」


「そうですか。誰かのもとにある幸せというのも、悪いモノではないのかもしれませんね。お手数をお掛けしました。それで貴女は三賢者を探しているのですね」


「なんでそれ……そっか、記憶を……そうね」


「僕が会ったのはクリッシー・マイヤーのみですが、特徴をお教えしましょう。無駄な時間を過ごさせてしまいましたから」


「いいの?」


「はい。口止めされてはいません。僕は次のウィッカを探してみようと思います。教える、と言っても僕もあまり知らないのですが、見た目は先程言ったように三〇前後。綺麗な出で立ちで、長春色の長い髪を左側に流していました。癖毛で、特徴的な髪型をしていたので会えば『ああ』となると思います。灰色の瞳で、快活な方でしたよ。僕が会った時はケープにショートパンツを合わせていました。どうやら美人が好きなようで、レ―ヴィのことも大層気に入っていたので、アッシュで釣れば食いついてくるかと思われます」


「イッカって、たまにえげつないこと言うよね」


「こういった性格なもので。それでは現実に戻りましょうか」


 何かを言う間もなく奈落の底へと落ちていく。慌てて空をもがいていれば、再び目を見開くに至った。

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