八月十日……その十七……
夏休み……八月十日……。
オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は夢の中で自分の妹(?)に出会った。彼は今、なんだかんだあって彼女に押し倒された状態で噛み付かれている。
え? どこにかって? それはもちろん、首筋である……。
「……おーい、小雪ー。そろそろ離れてくれないかー?」
壊人の声は白しかない空間に響き渡った。
しかし、彼女はいっこうに離れようとしない。
白髪ロングと血のように赤い瞳(ジト目)と白いワンピースが特徴的な美少女……いや美幼女『不死鳥 小雪』は嬉しそうにニコニコ笑っている。
「おい、小雪。いい加減にしないと……」
「ガブッ!!」
「いてっ!!」
彼女は絶対に逃がさないと言わんばかりに噛む力を強くした。
「……あのな、小雪。こんなことずっとされてたら、さすがの俺でも気が参っちまうんだよ。だからさ、そろそろ離れてくれないか?」
彼がそう言うと、彼女はスッと彼から離れた。
「おー、ようやく分かってくれたのか。いやあ、正直、ずっとあのままの状態が続くと思ってたから、助か……」
その時、彼は気づいた。
彼女の息遣いが荒くなっているのを……。
「え、えーっと、小雪さーん。大丈夫ですかー?」
彼が苦笑いを浮かべながら、彼女に手を伸ばすと彼女はその手を両手でしっかりと握った。
「お……お兄ちゃん……。私もう……我慢できないの……。お兄ちゃんの全部を……私にちょうだい」
あー、うん。なんとなくこうなるだろうなーとは思ってたけど、まさか本当にそうなるとはな……。
しかし、ここで小雪の言いなりになるわけにはいかないからな……。
うーん……どうしたものか……。
彼がそんなことを考えている間に、彼女は彼の右手を口の中に入れようとした。
「おいおいおいおい! それは普通にシャレにならないからやめてくれ!」
「じゃあ、私にお兄ちゃんの全部をちょうだい」
「いや、それはちょっと無理っていうか……なんていうか」
彼が彼女から目を逸らすと、彼女は静かに泣き始めた。
「……酷いよ、お兄ちゃん。私はこんなにお兄ちゃんのことを愛してるのに……」
「……小雪」
「……ねえ、お兄ちゃんは私のこと好き? 好きだよね? ねえ?」
彼女の目のハイライトは、いつのまにか消えていた。
彼女の赤い瞳の中に、戸惑う自分の姿が映った時、彼は彼女を突き放そうとした。
しかし、彼は無意識のうちに彼女の胸に手を置いていた。
彼がそれに気づくのにかかった時間は、それから五秒後のことだった。
「す、すまん! 今のはわざとやったんじゃないんだ! 許してくれとは言わないが、無かったことにしてくれ! 頼む! この通りだ!」
彼が合掌しながら、彼女に謝ると彼女は少しだけ頬を赤く染めていた。
「……うん、いいよ。今回だけ特別に許してあげる。けど、一つ条件がある」
「そ、それはいったい何なんだ?」
「え、えーっと……私の首筋に……キ……キスしてくれたら、許してあげてもいいよ……」
「それで……そんなので本当に許してくれるのか?」
「うん……」
「本当に本当だな?」
「うん……」
「本当の本当に本当だな?」
「……しつこいのは」
「え?」
「しつこいのは嫌いだよ! えいっ! カプッ!!」
「うっ……」
彼は再び彼女に噛み付かれた。
もちろん、首筋に……。
彼が意識を失う直前、彼女は彼と手を繋いだ。
まるでこの空間から出られないように拘束するかのように……。




