表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/405

八月十日……その五……

 夏休み……八月十日……。

 オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』は家族とクラスメイトと共に花火大会(けん)夏祭りにやってきた。


「ねえ、お兄ちゃん。一緒に『わたあめ』食べようよ」


 壊人かいとの義理の弟である『不死鳥ふしどり 心悟しんご』はニコニコ笑いながら、彼にそう言った。


「ん? あー、まあいいが、お前『わたあめ』好きなのか?」


「うん! 好きだよ! 甘いものとお兄ちゃんは僕にとって必要不可欠な存在だよ!」


「そうなのか? でも甘いものばかり食べてたらダメだぞ? バランスよく食べないと病気にかかりやすくなるからな」


「それは分かってるよ。でも、お兄ちゃんがいない世界でなんて生きていけないよ……」


 心悟しんごが少しうつむくと、彼はそっと心悟しんごの頭に手を置いた。


「いいか? 心悟しんご。俺はいつでもお前を守れるわけじゃないし、いつかはこの世からいなくなっちまう。これはどうしようもないことだから、しょうがない……。けどな、もしその時がやってきても、お前は俺がいなくても生きられるように強くならなくちゃいけないんだよ。分かるか?」


「それは……そうだけど……」


「まあ、その……あれだ。だから……そ、その時が来るまでは、できるだけそばにいてやるから、俺の目の届く範囲にいろよ……」


 心悟しんごはそれを聞くと目をかがやかせながら、彼の横顔を見ていた。


「……お兄ちゃん。それって、もしかして……僕に対しての告白……だったりする?」


「なっ……! バ、バカ! 今のはそんなんじゃねえよ! か、勘違いするなよ、まったく……」


「えへへへ、照れてるお兄ちゃん可愛いー。頭撫でさせてー」


「はぁ? お前、それどういう……」


 彼が最後まで言い終わる前に、心悟しんごは彼の頭を撫でていた。


「よーし、よしよし。ほら、お兄ちゃん。こっち向いてー」


 彼は、ぷいとそっぽを向くと、ニヤニヤと笑っている他のメンバーに対して助けを求めようとしたが、今は心悟しんごの好きにさせてやろうと思ったため、それはあえて行動に移さなかった。


 *


「はい、お兄ちゃん。あーん♪」


「え? いや、俺は別に……」


「え? お兄ちゃんは僕の『わたあめ』嫌いなの?」


「いや、別にそういう意味じゃ……」


「ひどいよ! お兄ちゃん! ちゃんと全部食べてよ! 僕の全部食べてよ!!」


 その声を耳にした周りの人たちの視線が壊人かいとに向けられる。

 心悟しんごの外見は女の子っぽいため、客観的に見れば、彼女を困らせている彼氏にしか見えない。

 もしくは妹が買ってくれた『わたあめ』をこばむダメ兄貴だろうか。

 まあ、何にせよ……今の彼にできることはただ一つだった。


「はぁ……分かったよ。食べればいいんだろ? 食べれば」


「うん、でも、せっかくだから、一緒に食べようよ」


「え? いや、それはちょっと……」


「ダメなの?」


 心悟しんごの『つぶらなひとみ』。

 壊人かいとの攻撃力が下がった。


「はぁ……分かったよ。一緒に食べてやるよ」


「本当?」


 彼が小首をかしげる姿に一瞬、ドキッとする壊人かいと

 彼が男であることを……そして、義理の弟であることを知っている壊人かいとは、首を横に振って気を引き締めた。


「あ、ああ、本当だ。だから、そんな顔しないでくれよ。お願いだから……」


「うん、分かった! それじゃあ、いくよー」


「お、おう」


 彼が『わたあめ》を壊人かいとの口元へと移動させる。徐々に近づいてくるピンク色のケサランパサラン。

 壊人かいとが仕方なく、それを食べようとした……その時……。


「はむっ!」


「……!?」


 壊人かいとくちびるに何かやわらかくて熱を帯びたものが一瞬、確かにれた。


「あー、おいしい。ねえ? お兄ちゃん」


 彼から離れて、舌()めずりする黒髪ショートの少年の顔からは、どこか色気を感じた。


「え? あ、ああ、そうだな。おいしいな」


「へえ、そうなんだ……。僕のくちびる、そんなにおいしかったんだ」


「え? ちょ、ちょっと待て。それじゃあ、さっきのはやっぱり……」


 彼が最後まで言い終わる前に、心悟しんごは人差し指で彼のくちびるを押さえた。


「男同士だから、さっきのはノーカウント……。だよね? お兄ちゃん」


「あ、ああ、そうだな……。そうだよな、あはははははは」


 その時の心悟しんごは、とても満足そうな顔をしていたという……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ