八月十日……その三……
夏休み……八月十日……夜……。
オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は、義理の弟である『不死鳥 心悟』と最近、家族の一員となったパーフェクトブレイカーこと『不死鳥 総太』と彼らの母親である『不死鳥 響』とクラスメイトの『田中 泉』と同じくクラスメイトの『梅雨原 霞』と共に花火大会兼夏祭りにやってきた……。
「はぁ……」
壊人は目的地に着いた瞬間、溜め息を吐いた。
「えーっと、もしかして壊人って、こういうイベントに参加するの初めてだったりする?」
赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』は、彼にそう訊ねた。
「まあ、それは否定しないが、わざわざ人が多い場所に来て花火を観る意味が俺には分からない」
彼の発言を聞いた瞬間、黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子『梅雨原 霞』は彼にこう言った。
「不死鳥くん。こういうのはね、楽しんだ者勝ちなのよ」
「……? えーっと、それはどういう意味だ?」
「そうね……。それじゃあ、一つ例え話をしましょうか」
「例え話……ねえ」
彼がそう言うと、彼女はゆっくりと語り始めた。
「花火はね、一言で言うと、一つの作品なのよ。職人さんたちがその日のために試行錯誤を繰り返して作り上げる『芸術作品』と言っても過言ではないわ。そして、人々はその作品を観にやってくる。美術館と同じような感覚でね。夜空という名の黒いキャンバスに色とりどりの花を咲かせるように……花の寿命というものがあまりにも短く、儚いことを表現するかのようにね……。私たちがこれから観る花火だって、その一つ一つが職人さんたちの魂の結晶なの。だからね、不死鳥くん。私たちと一緒に夏の夜空を彩る素晴らしい作品を観に行きましょう……」
彼女の話が終わると共に、その話を聞いていたメンバー全員が一斉に涙を流し始めた。
「え? いったい何なの? これは……」
彼女はみんなが想定外の反応をしたせいか、慌てふためいていた。
「梅雨原さん」
「な、何? 不死鳥くん」
「俺さ、花火って騒がしくて、うるさいから今まであんまり好きじゃなかったんだよ。けど、梅雨原さんの話を聞いたら、花火ってすごくいいものなんだなって思えた。だから、その……今日、誘ってくれてありがとう。おかげで今年の花火大会は楽しめそうだ」
彼女は彼の笑顔を見た瞬間、顔が真っ赤になってしまったため、できるだけ彼を見ないようにしながら、彼にこう言った。
「そ、そう……。それなら、今日は一緒に楽しみましょうね。不死鳥くん」
「ああ、そうだな。はぁーあ、早く始まらないかなー」
彼ら、彼女らの足音が人混みの中に消えていく。そして、それらのすぐ後から忍び寄る闇が彼ら、彼女らの脅威となることはまだ誰も知らない……。




