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八月十日……その二……

 夏休み……八月十日……夕方……。


「かーいとくん! あっそびっましょー!」


 赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中たなか いずみ』は、オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』がいる『不死鳥ふしどり家』の前で、そう叫んだ。

 すると、玄関から彼が飛び出してきた。


「おいおいおいおい、人んの前で大声を出すなんて、どういうつもりだ?」


「えー、別にいいじゃん。それより、早く行こう。ねえ?」


「いや、そう言われても、まだ準備できてないから無理だぞ?」


「えー、そんなー。じゃあ、早くしてよー」


「あー、分かった、分かった。あと十分以内に……」


「ねえ、壊人かいと。女の子をこんなところで待たせてもいいと思うー?」


「な、何だよ、その笑顔は……。というか、田中さんは何が言いたいんだ?」


 田中さんは、彼の顔面に拳を入れ……かけたが、寸止めにした。


「……え、えーっと、その……とりあえず中にどうぞ」


「よろしい」


 田中さんの威圧拳。

 壊人の攻撃力がガクッと下がった。


「あら、田中さん。遅かったわね」


「ちょ、ちょっと壊人かいと! なんで梅雨原つゆはらさんが壊人かいとの家にいるのよ!」


 田中さんは、彼女を見るなり騒ぎ出した。一応、ここは玄関だから、静かにしてほしいなー。

 そんな彼の気持ちなどつゆ知らず、田中さんと梅雨原つゆはらさんの冷戦が始まった。

 しかし、それは開始直後に終戦した。


「あらあら、二人とも元気がいいわね。ところで壊人かいとはどっちと付き合ってるの?」


 黒髪ロングと黒い瞳と無駄にでかい胸と白衣が特徴的な彼の母親『不死鳥ふしどり ひびき』はニコニコしながら、そう言った。


「は、はぁ!? どっちとも付き合ってねえよ! 恥ずかしいこと言うなよ! それより、心悟しんご総太そうたは何をして……」


 彼が最後まで言い終わる前に、彼女は彼をギュッと抱きしめた。


「なっ! い、いきなり何すんだよ! ついに頭がおかしくなったのか?」


「ううん、ただ久しぶりにしたくなっただけよ」


「な、何なんだよ、まったく……。二人とも見てるからやめてくれよ」


「あら? じゃあ、二人がいないところなら、してもいいの?」


「いや……それは……その……」


「もうー、今さらハグくらいで顔を赤くなるなんて、可愛いわねー。よしよし」


「あ、頭を執拗しつようでるな! 恥ずかしい……」


「えー、別にいいじゃない。減るもんじゃないんだし」


「だから、そういう問題じゃなくてだな……」


 その時、彼の義理の弟『不死鳥ふしどり 心悟しんご』が二階から降りてきた。


「あー! お母さんばっかりずるーい! 僕も混ぜて、混ぜてー!」


「じゃあ、僕も……」


 パーフェクトブレイカーこと『不死鳥ふしどり 総太そうた』は音もなく現れると、彼に抱きついた。


「あー、もう! いったい何なんだよ! 今日はハグの日なのか? ハグの日だから、こんなことするのか? でも、そろそろ俺を解放してくれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 女子二人は、思った。彼がこの家から巣立つ時、絶対についていくな……と。

 そして、同時にこう思った。

 なんか増えてる……と。

 この後、なんだかんだあったが、無事に花火大会(けん)夏祭りへとおもむくこととなった。

 なあ、母親同伴という条件付きなので、女子二人が彼にアプローチを仕掛けるには、かなりの高度なテクニックが必要となるだろう……。

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