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八月十日……その一……

 夏休み……八月十日……。

 その日の朝、一本の電話があった。

 それは、とある女子からのものだった。

 どうやら今日は夏祭りけん花火大会があるらしい。


「……ああ、分かった。じゃあ、補講が終わったら、俺の家に来てくれ。紹介したいやつがいるから。ああ……ああ……ああ、分かった。じゃあな」


 オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』は、そう言うとムクリと起き上がって、背伸びをした。


「うーん、まあ、あれだな。昨日、あんなことがあったってのに、俺はいつも以上に落ち着いてるな。感覚が麻痺まひしているってわけではなさそうだけど……」


 彼は、ベッドから出るとカーテンを開けた。


「うわー、今日も暑そうだなー」


「うん、そうだね」


「ああ、まったくだ……って、どうして俺の背中に体を預けてるんだ? 心悟しんご


 彼の義理の弟『不死鳥ふしどり 心悟しんご』はなぜか彼のワイシャツを着ているが、とても幸せそうな顔をしている。


「えー? そんなのお兄ちゃんのことが好きだからに決まってるじゃん」


「いや、それは理由になってないぞ? というか、暑苦しいから離れてくれ」


「嫌だ」


「即答かよ……」


「それより、さっき誰と話してたの?」


「ん? ああ、まあ、田中さんがな、今日夏祭りけん花火大会があるから、一緒に行かないかって……」


「それ、僕も行っていい?」


「おい、まだ話の途中だぞ」


「でも、僕も同行していいんだよね?」


「あ、ああ、それは別に構わないが……。その代わり……」


総太そうたお兄ちゃんも連れて行く……でしょ?」


「あ、ああ、まあ、そういうことだ」


「そっか。なら、良かった」


「ん? 何がだ?」


「ううん、何でもない。ところで梅雨原つゆはらさんは今日、来るの?」


「あー、そうだな……。田中さんは何も言ってなかったけど……」


 その時、彼の端末が震え始めた。


「おっと、電話みたいだな。心悟しんご、悪いが少し離れてくれないか?」


「はーい」


 彼はトタトタとベッドの方までけていくと、端末を耳に当てた。


「はい、もしもし……。おー、梅雨原つゆはらさんか。どうしたんだ? こんな朝早くから……って、あー、待て待て、なんか田中さんと同じことを言いそうだから、その先は言わなくていいぞ。ああ……ああ……じゃあ、補講が終わったら、俺の家に来てくれ。紹介したいやつもいるから……。ああ……ああ……おう、じゃあな」


 彼が電話を切ると、黒髪ショートの少年が彼にこう言った。


「お兄ちゃんはモテモテだねー。ヒュー、ヒュー!」


「バーカ、そんなんじゃねえよ。二人は俺にとって、ただの……いや、大切な友達だから、できるだけ守ってやりたいってだけだ」


「ふーん、そうなんだー」


 彼はニヤニヤしながら、嬉しそうにそう言った。


「な、なんだよ。何か問題あるか?」


「ううん、別に何の問題もないよー。ただ……」


「ただ?」


 黒髪ショートの少年は、彼に近づくと彼の耳元でこうささやいた。


「僕のことも、ちゃんと大切にしてくれないとダメなんだからね?」


「お、おう……分かった」


「よろしい! それじゃあ、お兄ちゃん。朝ごはん食べようかー」


 彼はニコニコしながら、元気よくそう言った。


「ああ、そうだな。とりあえず朝ごはんにするか」


「うん!」


 二人は仲良く一階へと降りると、朝食の準備に取り掛かったのであった……。

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