八月八日……その一……
夏休み……八月八日……。
「はぁ……何で夏休み中なのに学校があるんだろうな……」
オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は、ぼそりとそう呟いた。
「いい? お兄ちゃん。こういう時はね、夏休みが夏休みじゃないのが高校って場所だと体に叩き込むしかないんだよ」
彼の義理の弟『不死鳥 心悟』は、彼にそう言った。
「まあ、それもそうだな……。補講を受けに行くためだけに学校に行くのは面倒だけど、エアコンが壊れたせいでサウナ状態になっている家にいるよりかはマシだな」
「うんうん、僕もそう思うよ」
「……あー、なんかこうしてお前と二人で登校するのは新鮮だな」
「え? どうして?」
「いや、だってさ。いつも田中さんと梅雨原さんが……」
その時、心悟は首を傾げながら、こう言った。
「ねえ、お兄ちゃん。田中さんと梅雨原さんって、誰のこと?」
「……え?」
彼は焦った。
ついに暑さで頭がおかしくなってしまったのかと。
しかし、心悟は嘘をついているようには見えなかった。
「な、なあ、心悟。俺はいつも誰と登校してたか分かるか?」
「え? いつも僕と登校してるけど、それがどうかしたの?」
彼はそれを聞くと、急に走り始めた。
「あっ! お兄ちゃん! 待ってよ! 学校はどうするのー!」
「悪い! 休養を思い出した! だから、後のことは任せる!!」
「え!? ちょっと待ってよ! お兄ちゃあああああん!!」
壊人はとりあえず田中さんの家に行くことにした。
「……はぁ……はぁ……はぁ……。や、やっと……着いた……」
壊人は息を整えながら、田中さんの家の玄関付近まで前進した。
「あのー? どちらさまですか?」
すると、背後から聞き慣れた声が聞こえた。
彼がゆっくりと振り返ると、赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』が白い毛並みが特徴的なチワワと共にそこに立っていた。
「え、えっと、その……俺のこと、知ってますか?」
彼は彼女の名前を呼ぼうとしたが、一応確認のため、そう訊ねた。
「……ごめんなさい。私はあなたのこと、全然知らないの。もしかして、どこかで会ったことある?」
「……そうか。なら、いい。悪かったな、家の前で。じゃあな、泉」
彼はそう言うと、歯を食いしばりながら、走り始めた。
「何だったんだろう、今の……。というか、どうして私の名前を知ってたのかな?」
「ワン! ワン!」
「ん? ホイップが珍しく尻尾『しっぽ》を振ってる。あの人に反応したのかな?」
彼は学校に着くと、梅雨原さんが居るであろう『文芸部』へと向かった……。




