八月七日……その十二……
夏休み……八月七日……。
「なあ、心悟。そろそろ機嫌直してくれよ」
「ふんっ!」
「はぁ……参ったな……」
温水プールから家に帰る道中、オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は、義理の弟である『不死鳥 心悟』の機嫌を損ねてしまったことを後悔していた。
『気温上昇』使いを倒すためにとはいえ、可愛い……いや、大事な弟を連れて行かなかったのは、どうやら失敗だったようだ。
「ああ、そうだ。アイスでも買って帰るか?」
「ふんっ!」
「じゃあ、何か飲み物でも買って帰るか?」
「ふんっ!」
「……はあ……これは……ちょっと無理そうだな」
彼がため息を吐くと、端末が震えた。
「はい、もしもし。あー、今か? 家に帰ってるところだけど、どうかしたのか? え? 俺そっくりの記憶喪失少年が現れたから、今からそこに行きたい? いや、無茶言うなよ。この暑い中、どうしてそんなことしないといけないんだよ。え? 何? 今日はそのまま外で食べることになりそうだから、好きな物を注文していい?」
心悟はそれを聞くと、目を輝かせた。
「……あー、まあ、それなら、いいかな……。じゃあ、なる早で帰るから、よろしく頼むぞ」
今、彼と話していたのは二人の母親である『不死鳥 響』。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! 早く帰ろうよ!」
「ああ、そうだな。じゃあ、先に謝っておくぞ。すまない」
「え? いったい何を……」
心悟が最後まで言い終わる前に、壊人は彼をお姫様抱っこしていた。
「いいか? しっかり掴まってろよ」
「う、うん、分かった」
彼は少し怯えていたが、同時に少し嬉しそうな顔をしていたそうだ……。
その頃……温水プール……田中さんと梅雨原さんは……。
「あー! もうー! どうして二人とも帰っちゃうのよー! せっかく一緒に遊ぼうと思ったのにー!」
「田中さん、二人にも色々あるのだから、そんなに怒っても何も変わらないわよ」
「ううー、でもー」
「はい、この話はもう終わりにしましょう。それに今日はこれから雨が降るみたいだから、早めに帰りましょう」
「え? そうなの? そっかー。じゃあ、もう帰ろっかー」
「そうね、そうしましょう」
二人はそう言うと、帰り支度を始めたのであった……。
「……花火大会は二人とも来られるといいなー」
「それはまだ分からないけど、多分、大丈夫だと思うわよ」
「へえ、どうしてそんなこと分かるの?」
「それは……まあ……なんとなくそう思うだけよ」
「そっかー。まあ、あんまり期待できないけどねー」
「さて、それはどうかしら?」
「えー、何それー」
何気ない会話を楽しむ二人の姿に合掌……。




