八月七日……その九……
夏休み……八月七日……。
パーフェクトブレイカーは、自分のしたことを後悔している。
パーフェクトブレイカーは、今回のような過ちを繰り返さないようにすると、心に決めた。
そう、精神が不安定だった彼にも心が宿ったのである。
しかし、彼の心はまだ生まれたばかり。右も左も分からない。
自分が何者で、どこから来て、どうしてここにいるのかも知らない。
「俺は……いったい……誰……なんだ?」
道路のど真ん中で立ち止まるパーフェクトブレイカー。
彼に浴びせられる車のクラクション。
しかし、彼にはそれが何か分からない。
彼は人工的に生み出された対オールブレイカー用の人造人間……。
最強の超能力者を倒すためだけに生み出された彼には、オールブレイカーと同じ……いや、それ以上とも言えるかもしれない『パーフェクトブレイカー』という超能力が付与されている。
「おい! お前! 死にたいのか! さっさと退きやがれ!」
車の運転手が彼に近づく。
「……俺は……誰だ……?」
「おい! 体調が悪いなら、今すぐ病院に行け! とにかく通行の邪魔なんだよ! だから、早く退いてくれ!」
彼は車の運転手の肩を掴むと、ブラックホールのような深き混沌を連想させる黒い瞳でじっと見つめた。
「な、なんだ! この力は……。くそっ! 離せ! このヒョロヒョロ野郎!!」
「教えて……くれ……。俺は……誰だ……?」
「そ、そんなの知るかよ! 自分が何者か分からないなら、市役所にでも行きやがれ!」
「し……やくしょ?」
「ああ、そうだ! そこからお前が何者なのか分かるはずだ!」
「分かった……そうする……」
彼はそう言うと、全細胞のリミッターを外した。
そして、世界の隅から隅まで情報化……簡略化……最適化すると、車の運転手にこう言った。
「ありがとう……」
「お、おう」
彼は市役所までの道のりを脳内で検索、経路を調べると、そこに向かって歩き始めた……。
自分が何者であるのかを知るために……。
「……僕は……自分が何者であるのかを……知りたい……。だけど、それを知った時、僕はどうなってしまうんだろう……。それはまだ分からない……けど、僕にとって、必要なものだと……いいな……」
彼はまだ知らない。
自分が全てを無に帰す存在であることを……。
自分が人工的に作られたことも……。
オールブレイカーを倒すために生み出されたことも……。
そして、オールブレイカーとパーフェクトブレイカーが戦わなければならない時がいずれはやってくることも、彼は……まだ……知らない……。




