八月七日……その四……
夏休み……八月七日……。
「ね、ねえ、今の見た?」
「ええ、あのオーラは間違いなく、不死鳥くんのものだったわ」
「だ、だよねー」
赤髪ロングと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』と黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子『梅雨原 霞』は、そんなことを話していた。
「それにしても、こんなに大勢の人たちがいるのに、力を使っても大丈夫だったのかな?」
そう、ここは温水プール。
見渡す限り、人……人……人……である。
故に、力を使えば、多くの人がその力を目にすることとなる。
彼の噂が広まれば、彼はまた転校を余儀なくされるかもしれないというのに、どうして彼は一瞬の躊躇いもなく、力を使ったのだろう。
「オールブレイカーは文字通り、全てを破壊できる最強の超能力……。だから、人の記憶の一部を破壊しようと思えば、容易にできるのよ」
「あっ、そっか。その手があったね。さすがだねー、梅雨原さん」
「別に……私はただ、事実を述べたまでよ」
「またまた照れちゃってー、この、このー」
田中さんは梅雨原さんをそんな風にからかった。
「や、やめて。人が見てるから」
頬を赤らめながら、視線を逸らす梅雨原さん。
それに反応したのか、耳元でこう囁く田中さん。
「あれー? どうしたのかなー? なーんか顔が赤いよー?」
「き、気のせいよ。私は別に何も気にしてなんか……」
「んー? いったい何を気にする必要があるのかなー? 私はいたって普通のことをしているだけなんだけどなー」
これは……危ない。このままでは何かが始まってしまう。淫乱……色欲……エロース……百合……。
そういうものが始まってしまう。
その前に田中さんを止めなくては、取り返しのつかないことになってしまう。
主に、梅雨原が……!
その時、彼が現れた。
それは音もなく、静かに出現した。
「よう、二人とも。もしかして、さっきの戦い、見てたのか?」
オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は、義理の弟『不死鳥 心悟』をおんぶした状態で顕現した。
「あー、うん、見てたよー。いやー、あんなに大きなタコは見たことなかったから、びっくりしちゃったよー」
田中さんは瞬時に彼の方を見ると、ニコニコ笑いながら、応答した。
「そうか……。でもまあ、周りの人に被害が出なかったから、本当に良かったよ。ところで梅雨原さんの顔が少し赤いような気がするけど、大丈夫か?」
「あー、大丈夫。大丈夫。ちょっと目眩がしただけって言ってたから。ねー? 梅雨原さん」
「え、ええ、まあ、そうよ……」
「そうか。まあ、無理するなよ。ちゃんと水分補給するんだぞ。じゃあ、俺はもう行くぞー」
「う、うん、またねー」
彼が去った後、田中さんは梅雨原さんの機嫌が悪くなっていることを知ったため、かき氷を奢ったという……。




