八月七日……その二……
夏休み……八月七日……。
「お兄ちゃん、行くよー! アクアスプラッシュ!!」
「なんのっ! アクエリアスショット!!」
オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』と彼の義理の弟『不死鳥 心悟』はプールで遊んでいた。単に水を掛け合っているだけなのだが、いちいち技名を叫ぶのは超能力者だからなのか……それともそういう性格なのかはよく分からない。
その様子をプールサイドから眺めているのは、赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』と黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子『梅雨原 霞』である。
「壊人たち、楽しそうだね」
「……そうね」
「……義理の兄弟……には見えないよね。あの仲の良さは」
「……そうね。まるで本当の兄弟ようね」
「……はぁ……あの輪の中に入るのは無理そうだね……」
「そうとは限らないわよ」
「え?」
「田中さん、ここはプールよ。学校のプールではなく、温水プール。ウォータースライダーや流れるプールがあるのだから、そういう機会はいくらでもあるわ」
「……梅雨原さん。……そうだね、チャンスはいくらでもあるよね! よおし! それじゃあ、遊ぶぞー!」
「ふふふ……それでこそ、田中さんよ」
不死鳥くんは、田中さんが野良超能力者だってことを知っても、彼女を破壊しようとはしなかった。
ねえ、不死鳥くん。あなたは、彼女のことを大切な友達だからそうしたの?
それとも、彼女とそれ以上の関係だから破壊しなかったの?
今はまだその理由は分からないけど、もし私が彼女と同じ立場だったら、あなたは私をどうしていたでしょうね……。
彼女は心中でそんなことを考えながら、田中さんの後を追った。
「さてと……そろそろ休憩するか」
「えー、まだ遊ぼうよー。お兄ちゃん」
「バーカ。水の中だからって、熱中症にならないとは限らないんだぞ? だから、ちょっと休憩するぞ」
「……はーい」
もう、せっかくお兄ちゃんと一緒にプールに来たのに、お兄ちゃんは僕のこと子ども扱いするし、田中さんと梅雨原さんもいるし……はぁ……なかなかうまくいかないな……。
「おーい、心悟ー。早く来い」
「あっ、はーい!」
彼は壊人と共に、飲み物を買いに行った。
「うーん……二人ともどこに行ったのかなー?」
「しばらく遊んでいたから、どこかで休んでいるのかもしれないわ。もう少し探してみましょう」
「うん、そうだね。ところで、どうして梅雨原さんは、私をプールに誘ったの?」
「それは、どういう意味かしら?」
「いや、その……梅雨原さんも壊人のことが好きなわけでしょ? だからその……」
「敵に塩を送るような真似をする必要はないってこと?」
「そう、それ」
「そうね……。あえて言うなら、そういう気分……だったからよ」
「そういう気分……か」
「ええ、そうよ。さぁ、早く二人を見つけましょう。時間は限られているのだから」
「あっ! ちょっと待ってよ! 梅雨原さーん!」
勘違いしないでね、田中さん……。私はただ、どちらか一方がリードしているのが、嫌いなだけよ。
二人は、彼らを見つけるためにところどころ水で濡れているプールサイドを歩き始めた……。




