八月七日……その一……
夏休み……八月七日……。
「はぁ……なんか……あれだな……。昨日は散々な一日だったな……」
オールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は、朝食を済ませた後、自室のベッドに座った状態でそう呟いた。
無理もない。
昨日は『タイムトラベラー』と戦い、なんとか退けることに成功したものの、後始末が大変だったのだから……。
「はぁ……あいつ、また来るとか言ってたけど、いつ来るのかな? もしかして今日……来たりしない……よな?」
彼はカレンダーに目をやりながら、そう言った。
今日は八月七日……。
ちなみに、の○太の誕生日である。
「はぁ……それにしても今日も暑いな……。いよいよ夏本番ってところかな」
彼が白いワンポイントテイシャツの襟を軽く握って、パタパタと風を起こしていると、黒髪ショートの少年が部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん、プールに行こうよ!」
「えっ? プール?」
*
プール……。
「それで? どうして二人ともここにいるんだ?」
壊人とその弟……『不死鳥 心悟』は、近くの温水プールにやってきたのだが、そこには例の二人がいた。
赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』と黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子『梅雨原 霞』の二人である……。
「いやー、こんなところで会うなんてねー」
「そうね、たまたま偶然、あなたに会えるなんて、思ってもみなかったわ」
「たまたま……ねえ……」
壊人は、二人のことをしばらくジト目で見つめていたが、まあそんな日もあるさ……と割り切った。
「じゃあ、遊びかー。行くぞー、心悟ー」
「あっ! ちょっと待ってよ! お兄ちゃーん!」
二人がその場からいなくなった直後、女子二人は何やら作戦会議をしていた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「んー? なんだー?」
「お兄ちゃんは、僕が来る前、どうやって夏を過ごしてたの?」
「え? あー、そうだなー。まあ、母さんと二人で」
「二人で?」
「家でゴロゴロしてたかなー。やることもなかったし、外に出るような用事もなかったから」
「そ、そうなんだ。でも今年はそんなことなくて、良かったね」
「ん? あー、そうだなー。たしかに今年は、いつもより……楽しい……な」
壊人の頬が一瞬、赤くなったのを彼は見逃さなかった。
「あれー? お兄ちゃん、どうしたのー? 顔が赤いよー?」
「そ、そんなことねえよ。ほら、行くぞ」
「うん、そうだね。行こう、行こう」
さてさて、どうなることやら……。




