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八月六日……その一……

 夏休み……八月六日……小さな山の山頂……。


「えーっと……ここ……どこだ?」


 オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』が見慣れない風景をの当たりにした直後に言ったセリフがそれだった。


「うーん……少なくとも俺が住んでる町じゃないのは確かだよな……」


 彼がそうつぶやくと、背後から声が聞こえた。


「おはようございます。オールブレイカー……いえ、『不死鳥ふしどり 壊人かいと』」


 彼が振り向くと、ペストマスクと黒い帽子(ハットの方)と黒いタキシードを身にまとった人物がそこにいた。


「お前、誰だ? というか、どうして俺のこと、知ってるんだ?」


「その質問にはお応えできませんが、とりあえず自己紹介をさせていただきます……。コホン、わたくしの名前は『タイムトラベラー』。ゆがんだ歴史を変えるために生み出された存在です」


「そうか……。けど、歴史を変えるなんて容易にできるようなものじゃないだろう?」


「はい、その通りです。わたくしは様々な時代に行き、ゆがんだ歴史を変えようとこころみましたが、どれも失敗してしまいました。わたくしが歴史に及ぼす影響力などたかが知れていたというわけです……」


「ほう……そうか……。それで? どうして俺をここに呼んだんだ?」


「おや? どうやら、あなたには今がいつなのか分かっているようですね……」


「俺は寝る前にカレンダーに印を付ける主義だから、日付には敏感びんかんなんだよ」


「なるほど。では、あなたの答えを聞かせてください」


「ああ、分かった」


 彼はキッとした目つきでこう言った。


「今日は一九四五年の八月六日……つまり、ここ広島市に原子爆弾……略して原爆が投下された日だ」


「はい、その通りです。では、あなたがここに呼ばれた理由も分かりますね?」


「はぁ……その悪魔の兵器をどうにかしてほしいんだろ?」


「はい、その通りです。では、よろしくお願いしますね」


「おいおいおいおい、待て待て待て待て。なんで俺がそんなことをしないといけないんだよ。というか、そんなことしたら俺は世界を敵に回すことになるんだぞ?」


「はて? あなたはその気になれば、この世の全てを破壊できる力を持っているはずですが、やはり恐怖は感じるのですね」


「いや、別に怖くはないけどよ。その……俺がそういうことに首を突っ込んだらいけない気がするんだよ。だから……」


「協力する気はない……ということですね?」


「ああ……」


「なるほど。分かりました。では、元の時代にお戻りください」


「え? そこは無理やり言うことを聞かせるパターンじゃないのか?」


「それは偏見です。失礼です。不愉快です。それでは、また出会える日を心待ちにしております」


 彼はそう言うと、指をパチンと鳴らした。

 その直後、オールブレイカーは自分のベッドの上に座っていた。

 カレンダーを見ると、八月六日だった……。

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