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本当は……

 夏休み……山……昼……。


「もうー! こんなの反則よー!」


 赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中たなか いずみ』は、そう叫びながら、木から木へと飛び移っていた。

 赤い光線が彼女の元へ次々と発射されている。

 それを発射しているのは、オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』(オートモード)である。


「発射角度修正……出力向上……装填そうてん速度倍増……」


 彼は空を飛びながら、彼女に向けて次々と赤い光線を発射していた。

 それは徐々にその威力をしていった。

 いや、それだけではない。

 彼女が次に飛び移るであろう木に向けて発射したり、次に飛び移る木を彼女が選んでいる間に発射速度を上げたり、破壊エネルギーを迅速じんそく装填そうてんしたりしていた。

 その結果、彼女は反撃はんげきすることができなくなってしまったのである。

 今、彼女ができることはただただ彼から逃げることだけである。


「……はぁ……まあ、こうなったのは壊人かいとだましていた私のせいだけど、元友人に対して全力で攻撃する今の壊人かいとは明らかにいつもの壊人かいとじゃないね……」


 田中さんはポツリとそうつぶやくと、地面に降りた。

 そして、彼にこう言った。


「ねえ! 壊人かいと! この辺で終わりにしようよ! じゃないと私、本当に死んじゃうよ? それでもいいのー?」


 彼女が両手でメガホンのような形を作りながら、そう言うと彼は攻撃をやめた。

 その後、彼女のところへ舞い降りた。


「……それは……信じて……いい……のか?」


「あのねー、あんな無茶苦茶な攻撃から逃げ切れると思う?」


「お前なら……可能なはずだ……」


「いやいやいやいや、さすがにあんなの無理だよー。いくら私が複数の超能力を使えても、壊人かいとを倒せるような能力ものはこの世に存在しないよー」


 彼女はニコニコ笑いながら、先ほどの攻撃がまた始まったら、どう回避かいひすればいいか……ということについて考えていた。


「それは……うそだな……」


「う、うそじゃないよー。この世の全てを破壊できる能力に勝てるわけないでしょー?」


「いや、嘘だ……」


「な、なんでそこまで言い切れるのー?」


「それは……お前の真の能力が……『奪取だっしゅ』だからだ……」


「…………!?」


 な、なんでバレてるの? 私は今まで一度も壊人かいとの前でその力を使ったことないのに!!


「お前は……野良超能力者にしては……かしこい方だ。しかし、お前はつい先ほど、口を滑らせた……」


「な、何のこと? 私は別に何も……」


 その時、彼女は気づいた。

 先ほど、彼に自分が『複数の超能力を使えること』を伝えてしまったことに……。

 彼女はそれに気づいた瞬間、『怪力』を発動し、拳を地面に突き立てた。

 土砂どしゃが作り出した煙幕えんまくが彼の視界を覆う。

 彼女はその場から逃げるために、『炎化』を使った。

 それは、文字通り……『その身を炎へと変えるもの』である。


「じゃあね……壊人かいと……。でも、次は必ずその力はいただ……」


 彼女が最後まで言い終わる前に、彼は彼女(炎の形態)をつかまえていた。


「う……嘘……。どうして私の体にれられるの?」


 彼は、漆黒の瞳をかがやかせながら、こう答えた。


「それはな……俺が最強の超能力者……オールブレイカーだからだ」


 彼の瞳には、元の姿に戻っていく彼女の姿がうつっていた。


「そっか……。そうだよね……。壊人かいとは野良超能力者たちがたばになっても一瞬で存在ごと破壊できるもんね……」


「たしかに俺は、その力を持っている。けど、今まで友達だったやつに対して……その力を使えると思うか?」


「じゃ……じゃあ、さっきのオートモードは……」


「俺が野良超能力者に対して、力を使うのを躊躇ためらった時にのみ発動する……呪いだ」


「呪い……?」


「ああ、そうだ。普通は殲滅せんめつ対象を倒すまで解除されないから、俺にはどうすることもできない……。けど、今回は違った。なぜだか分かるか?」


「えーっと……ごめん……私には分からない……」


 彼は目から涙を流しながら、彼女の顔を見ると、歯を食いしばった。

 その後、彼女を抱きしめながら、こう言った。


「それはな……田中さんが……俺をだましてなんかいないからだ……!」


 彼女は彼を抱きしめると、こう言った。


「……はぁ……やっぱり慣れないことはするものじゃないね……。ごめんね、壊人かいと。でも、こうしないと組織の人たちに怒られちゃうから、仕方なかったんだよ……」


「もういい……。何も言うな……。俺だって、田中さんを破壊しようとしたんだから……」


「もうー、そんなに泣かないでよ。いつまでもクヨクヨしてたら、前に進めないよ?」


「ああ……そうだな……。でも、本当に……良かった……」


 彼は、今までの彼女の行動が組織に所属する者たちをあざむくためであったことを知った。

 それと同時に、自分がやろうとしていたことをいた。

 彼女は彼が泣き止むまで……ずっと彼を抱きしめていた……。

 雨が降り始めてもなお、彼をギュッと抱きしめていた……。

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