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オートモード

 夏休み……山……昼……。


「はぁ……結局、三匹しか釣れなかったが、まあ、いいか……」


 オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』はそう言いながら、田中たなかさんと梅雨原つゆはらさんが待つテントに向かって歩いていた。

 すると、田中さんの笑い声が聞こえてきた。


「ん? この声って田中さん……だよな? 梅雨原つゆはらさんが面白いことでも言ったのかな?」


 彼はそのことに対して、あまり深く考えなかった。


「ただいまー」


「あっ、おかえりー」


 彼がテントの近くに行くと、赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な『田中たなか いずみ』がカレーを作り終えていた。


「なんだよ……。結局、カレーにしたのかよ……。うーん、まあ、いいか。それより、梅雨原つゆはらさんはまだ帰ってきてないのか? 今日はあんまり釣れないから、もう戻ってくるはずなんだが……」


「あー、梅雨原つゆはらさんなら、さっき帰ってきたよ。でも、気分が悪くなったみたいでね。テントの中に入っちゃったよ」


「そうか……。じゃあ、少し様子を……」


 彼がテントの中に入ろうとした時、田中さんは彼の前に立ちふさがった。


「だ、大丈夫だよー。少し横になれば、良くなるって言ってたから」


「そうなのか? なら、いいんだが……」


 彼が、そう言うと田中さんは、カレーが入っている鍋の方に移動した。

 その直後、テントの中から黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子『梅雨原つゆはら かすみ』が顔を出した。


不死鳥ふしどりくん……逃げ……て」


「逃げる? 大袈裟おおげさだな。梅雨原つゆはらさんは。ほら、早く横に……」


 彼女は、彼の手を握ると苦しそうにこう言った。


「お願い……早く……逃げて……」


 その時、彼は彼女の目を見た。

 その目はとてもうそをついているものではなかった。

 彼は、彼女のその目とここに戻って来てからのやり取りを瞬時に整理すると、ようやくそれに気づいた。

 彼は田中さんの方を向きながら、ゆっくり立ち上がると、彼女にこう言った。


「なあ、田中さん。一つ確認してもいいか?」


 彼女はニコニコしながら、こう答える。


「うーん? なあに?」


「田中さん……さっき大声で笑ってたよな? あれはいったい何なんだ?」


「ん? あー、あれはね…………最強の超能力を自分のものにできたら、どんなことに使ってやろうかなって考えてただけだよー。あはははははは!!」


 彼女の不気味な笑みは、いつもの田中さんの笑顔ではなかった。


「田中さん……いや、お前は俺の敵……なんだな?」


「うん、そうだよー。今までだましててごめんねー。でも、壊人かいとが悪いんだよ? 壊人かいとが私を選ぼうとしないから、こんなことになっちゃったんだよ?」


「野良超能力者にしては用意周到なようだが、俺を倒せると思っているのか?」


「そうだねー。たしかに壊人かいとの能力は強すぎるから普通のやり方じゃ、まず無理だろうねー。だ・か・ら……普通じゃないやり方で倒そうと思いまーす!」


「ほう、なら、やってみろよ。その普通じゃないやり方とやらを……」


 彼がそう言うと、彼の背後に梅雨原つゆはらさんが現れた。

 そして、彼の両腕を拘束こうそくした。


「なっ! 梅雨原つゆはらさん! いったい何を!」


「あははははははははは! オールブレイカーの弱点その一! 友達に手を出せない!!」


「く、くそっ! 梅雨原つゆはらさん、俺だ! お願いだから、目を覚ましてくれ!」


「無駄だよー。私の特製カレーを食べたら、誰であろうと私のこまになっちゃうんだからー。あはははははははは!!」


 くそ! どうしてこんなことに……!

 彼は、心の中でなげいた。

 この現実が夢であってほしいと思った。

 しかし、彼の使命はこの世から野良超能力者たちを消すことである。

 ゆえに彼は、野良超能力者たちを消すことしかできない。


「……さあてと、そろそろ最強の超能力をいただこうかなー……って、あれ? 壊人かいとー? どうしたのー? 急に黙っちゃうなんてらしくないよー?」


 彼女が彼に近づいた瞬間、彼の体からとてつもない風圧が放たれた。

 その影響で梅雨原つゆはらさんは、テントの中に吹っ飛ばされた。


「こ、この力は、いったい……」


 彼女はそう言いながら、両腕でそれを防いでいると彼はポツリとこうつぶやいた。


「オールブレイカー……オートモード……発動」


 それは……彼の中から感情が消える合図……。

 さぁ、戦え……。おのれの使命を果たすために……!

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