スナイパー
夏休み……山……。
「ただいまー……って、どうして田中さんは涙目になってるんだ?」
早朝トレーニングから帰ってきたオールブレイカーこと『不死鳥 壊人』は赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』にそう言った。
「……そ、それはその……もう帰ってこないかもしれないって思ったから……だよ」
「……田中さん」
「不死鳥くん、こういう時は頭を撫でてあげるのがベストよ」
彼の耳元でそう囁いたのは、黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子『梅雨原 霞』だった。
「そうなのか? じゃあ、やってみるか」
彼は田中さんに近づくと、頭を撫で始めた。
「ど、どうして私の頭を撫でるの?」
「いや、その……こういう時はこうすればいいって梅雨原さんが……」
彼が最後まで言い終わる前に、彼女は彼に抱きついた。
「……バカ」
「な、なんだよ、いきなり。俺、なんかおかしなことしたか?」
「ううん、壊人は悪くないよ。私がこうしたいと思ったら、やっただけだよ」
「そうか……。なら、いいんだが……」
彼女はしばらく彼から離れなかった……。
その頃……スナイパーは……。
「……ふっふっふっふっふ……。覚悟しろよ、オールブレイカー。今日がお前の命日だ!」
山のてっぺんに立っているオールブレイカーに当たるように銃口を向けた彼は、そう言いながら引き金を引いた。(スナイパーライフルの色は銀色である)
目標までの距離は約三百メートル。
しかし、彼の能力は『狙撃手』。
どんなところからでも、確実に獲物を撃ち抜ける。
そう……彼以外なら……。
「な、なにぃ!?」
彼が先ほど撃った銃弾は、オールブレイカーの頭……というより髪の毛に触れた瞬間、消滅した。
そんな経験など今までしたことがなかった彼は、ひどく動揺した。
しかし、この仕事が終われば、たんまり報酬をもらえる。
だから、彼は諦めなかった。
その時までは……。
「おい、お前……。よくもやってくれたな」
彼の背後にオールブレイカーが現れた瞬間、彼は恐怖で体が震え始めた。
「俺はさ……この後、キノコ狩りをするんだよ。だから……お前はここで破壊する」
「ひ……ひいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
迷彩服を着ている彼は、そう言いながらオールブレイカーに銃口を向けたが、その時にはもう彼の死は決まっていた。
「オールブレイカー……発動」
「うわああああああああああああああああああ!!」
彼はオールブレイカーの力によって、存在ごと破壊されてしまった。
「こんなところまで俺を追ってきたやつが……いや、やつらがいるのか……。まったく、油断も隙もねえな」
彼はそう言うと、二人のところへ戻っていった。




