チークキス
夏休み……海……。
「ねえ、壊人」
赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』は隣で団扇を扇いでいるオールブレイカーこと『不死鳥 壊人』にそう言った。
「んー? なんだ?」
「その……ごめんね……。はしゃぎすぎちゃって」
自分たちで持ってきたパラソルの下で横になっている田中さんに対して、壊人はこう言った。
「確かに、今回は田中さんの不注意が原因でこうなった……けど、熱中症にならなくて本当によかった……」
「……壊人」
「まあ、今度からは気をつけろよ。せっかくの夏休みが台無しになる」
「……うん、そうだね。けど、ありがとね。ここまで私を運んでくれて」
「ああ、それはまあ……友達だし。梅雨原さんに運ばせるわけにはいかなかったから、成り行きというか、なんというか」
「うん、それは分かってるよ。けど、一応、お礼を言っておこうと思ったから」
「……そうか」
「……うん」
それからしばらく沈黙が続いた……。
「……ねえ、壊人」
「ん? なんだ?」
「その……こんな時に訊くことじゃないと思うんだけど……。こ、この水着……どうかな?」
田中さんが身に纏っているのは、赤いビキニ(白いフリル付き)である。
「うーん、俺はそういうのよく分からないけど、まあ、可愛いと思うぞ……」
「……そっか。なら、よかった……」
「ん? 何がだ?」
「いや、その……昨日、適当に選んで買ってきたやつだから、似合ってるかどうか不安だったんだよ……」
まあ、本当は梅雨原さんと一緒に選んだものなんだけどね……。
「……そうか。けど、そんなに変じゃないぞ。というか、よく似合ってる」
「……え? あ、ありがとう」
彼が急にそんなことを言ったため、彼女は少し照れてしまった……。
その証拠に、顔が真っ赤になっている。
「おい、顔が赤いぞ? 大丈夫か?」
彼が『デコピタ』をしようと、こちらに額を近づけてきたが、彼女はそれを拒まなかった。
説明しよう。『デコピタ』とはおでこ同士をピタッとくっつけて、熱を測る行為のことである。
「……うーん、熱は……ないみたいだな。必要な物があったら言えよ。その辺で買ってくるから」
「うん、ありがとう……。壊人」
「どういたしまし……」
彼女は、彼が最後まで言い終わる前に、彼の背中に手を回した。
そして、彼の頬に優しくキスをした。
それが暑さのせいだったからなのか、単に勢いでやったことなのかは分からなかったが、彼の顔が田中さん以上に真っ赤になったことは、言うまでもない……。




