賢い選択
放課後……。
「ねえねえ、お兄ちゃん。どうしてそんなに怒ってるのー? 私、何かしたっけ?」
「……何かしたか……だと? お前、本当は悪魔だろ? たしか天使って堕天すると堕天使またの名を悪魔になるんだよな? お前の頭に天使の輪っかがないのはそういうことなんだろ?」
「え? あー、あれねー。あれダサかったから天ぷらにして食べちゃったんだよねー」
は? そんな野草みたいな感じで食べていいのか?
しかも天ぷらって……。
「お前、やっぱり変なやつだな。普通そんなことしないぞ?」
「えー、そうかなー? 結構いると思うよ。ダサいって思ってる子」
うーん、まあ……正直、戦闘時に限らず邪魔になるよな、あれ。
「うん、まあ、気持ちは分からなくもない。けど、それとこれとは話が別だ! お前、授業中ずーっと俺で遊んでただろ!」
「えー、何のことー? 私、そんなに記憶力ないから覚えてなーい」
「そうか。じゃあ、もう明日から学校に来るな。家で留守番してろ」
「あー、それは無理だよー」
は?
「なんで無理なんだ?」
「いや、だって今日屋上で私とキスしてじゃん」
「それがどうかしたのか? まさか、そのせいで俺の近くにいないと生きていけなくなったとか言うんじゃないんだろうな?」
文奈はニコニコ笑いながらコクリと頷く。
おいおいおいおい、そんなの聞いてないぞ!
どうしてそうなるんだよ!
いったいどこのベ○坊だよ! ボ○ケニオンとサ○シかよ!
「あー、じゃあ、こうしよう。今から俺はお前との記憶を破壊する……」
「あっ、それは無理だよ。私とのつながりをなかったことにしようとすると、お兄ちゃんの力が暴走して世界が終わっちゃうから」
は、はぁ? なんだよ、それ。
なんでそんなことになってるんだ?
「お前な……ふざけるのも大概に」
「私はお兄ちゃんを助けるためにやってきた。けど、世界を助けるとは言ってない。それをどう解釈するのかはお兄ちゃんに任せるよ。さぁ、どうする? オールブレイカー」
ふむ……。俺は選ばなければならない。
ここで我慢するか、世界を犠牲にしてこいつとの関係を帳消しにするか。
うーん、まあ、前者の方がいいな。
俺が我慢するだけで世界が救われるのなら、俺はそれで構わない。
「はぁ……帰るぞ。文奈」
「うん! 分かった! えへへへ、お兄ちゃんがバカじゃなくて本当に良かったよー」
「勘違いするな。俺はこの世界を破壊しようと思えば、いつでもできるんだよ。けど、世界はまだまだ捨てたものじゃない。だから、今はまだしないし、そのトリガーになる気もない。ただ、それだけだ」
「そっかー。うんうん、なかなか賢い選択だね」
お前に褒められても、ちっとも嬉しくないんだが。
はぁ……妹って面倒だなー。




