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九月二日……その一……

 九月二日……朝……。

 オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』が目を覚ますと、彼の義理の弟である『不死鳥ふしどり 心悟しんご』がソファからいなくなっているのに気づいた。


『ニャー』


 そんな彼の元にやってきたのは黒猫のクルスと白猫のシルクだった。


「おはよう、二人とも。なぁ、心悟しんごがどこにいるのか知らないか?」


『すみません。分かりません……。ですが、今日は早めに学校に向かったようです』


「そうか……。ありがとう」


 彼はそう言うと、急いで制服に着替えた。

 彼には擬人化しているように見える二匹は、彼がいつもより難しい表情をしているのに気づいた。


『あのー、ご主人様。私たちの朝ごはんは……』


「あー、すまん。ちょっと待っててくれ」


 彼はそう言うと、台所の戸棚から猫缶を二つ取り出した。彼はふたを開けると、足元にいる二匹の目の前に置いた。


『ありがとうございます。ご主人様』


「どういたしまして。じゃあ、いってくる」


『いってらっしゃいませ、ご主人様』


「ああ、ちゃんと留守番してろよ?」


『承知しました』


 彼は二匹の頭を撫でると、学校に向かって走り始めた。


 *


 屋上……。


「……はぁ……僕ってバカだな……。お兄ちゃんに本当のことを知られるのが怖いくせに、お兄ちゃんのとなりに居座ろうとしてる……」


 心悟しんごは青空を見ながら、そう言った。

 その時、彼はやってきた。


「よう、心悟しんご。どうして朝からこんなところにいるんだ?」


「……そんなのどうだっていいでしょ? ただ、ここに来たい気分だっただけだよ」


「そうか? いつも遅めに学校に来るお前が、こんなところにいる時点でおかしいと思うのだが……。なあ、心悟しんご


「なあに? お兄ちゃん」


「お前……俺に何か隠し事してないか?」


 黒髪ショートの少年は彼の方に目を向けると、静かに微笑ほほえんだ。


「もしそうだとしたら、どうするつもりなの?」


「別にどうもしねえよ。話したくないことなら、なおさらだ。けど……」


「けど?」


「……それが、お前を苦しめているのなら、俺はそれを破壊する。ただそれだけだ」


「……お兄ちゃんは心配性だなー。僕が何に苦しめられてるっていうの?」


 心悟しんごが無理に笑顔を作っているのに気づいた彼は、ピシャリとこう言った。


「それだよ、それ。お前のその笑顔は心からの笑顔じゃない。無理に頬の筋肉を上に上げてるだけだ」


「……はぁ……やっぱりお兄ちゃんにはバレちゃうか」


「当たり前だ。俺を誰だと思っている」


「世界最強の超能力者『オールブレイカー』でしょ? でも、まあ僕にとっては最愛の兄だけどね」


心悟しんご。お前は俺の大切な家族の一員だ。だから、できるだけ力になってやりたい。それは分かるか?」


「うん、分かるよ。でもね、お兄ちゃん。優しさは時として、人を傷つけることもあるんだよ?」


「そうだとしても、俺は今のお前を放ってはおけない。だから……」


「なんとしてでも僕を助けたい……でしょ?」


「ああ、そうだ」


 心悟しんごは深い溜め息をくと、彼の目の前に移動した。


「……分かったよ。ちゃんと話すから、そんなに見つめないで」


「分かった」


 彼がそう言うと、心悟しんごは自分の秘密を彼に話し始めた。

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