八月二十一日……その四……
夏休み……八月二十一日……放課後……。
今日はオールブレイカーこと『不死鳥 壊人』の誕生日である。
「……さてと……帰るか」
彼が下駄箱で靴を履き替えようとした時、後ろから誰かに抱きしめられた。
「……あのさー、俺は早く家に帰りたいんだよ。だからさ、離してくれよー」
彼がそう言うと、その人物は彼の背中に顎をグリグリと押し付け始めた。
「……痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。地味に痛いからやめてくれ」
「……うん、いいよ」
その人物はそう言うと、彼の目の前に移動した。
「……それで? 俺に何の用だ?」
彼は赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』にそう言った。
「今日、壊人の誕生日なんでしょ?」
「ん? あー、まあ、そうだな……」
「だったら、どうしてそんなに嫌そうな顔するの?」
「いや、別に嫌そうな顔なんてしてな……」
「してるよ。なんなら、鏡で見てみる?」
今日の田中さんは、なんか怖いな。
月に一度のあの日なのかな?
「ねえ、壊人」
「ん? なんだ?」
「今、変なこと考えてたでしょ?」
「いや、別に……」
彼がそう言いながら、彼女から目を逸らしたため、彼女は察してしまった。
「……そう。だけど、これだけは言わせて。壊人は自分のこと嫌いなの?」
「……どちらかっていうと、嫌いだな」
「どうして?」
「……考えてみろよ。少し力を解放するだけで万物を破壊できる力を持って生まれたやつが自分のことを好きになれると思うか?」
「それは、その人次第だと私は思うよ……」
「……今日の田中さんは、なんかいつもと違うな。何か変なものでも食べたんじゃないのか?」
「ううん、そんなことないよ。私はいつもの私だよ」
「そう、なのか?」
「うん、そうだよ……。あっ、そうだ。ねえ、壊人」
「んー? なんだー?」
「私からの誕生日プレゼント受け取ってくれる?」
彼女は彼と顔を合わせた時から、両腕を後ろに回している。
彼はそのことに気づくと、人差し指で頬をポリポリと掻きながら、こう言った。
「ああ、いいぞ。けど、『私が誕生日プレゼントだよー!』とか言ったら、即帰るからな」
「あはははは、私、そんなこと言わないよー。もうー、変な壊人」
その笑顔はいつもの田中さんのものだったため、彼は少し安心した。
「……コホン。えーっと、それじゃあ、渡すよ」
「お、おう……」
彼が両手を前に出すと、彼女は両腕を後ろから前に動かした。
真っ白な包装紙に包まれた立方体には、真っ赤なリボンが巻かれており、箱には『誕生日おめでとう!!』と書かれている……。
彼はそれを両手で受け取ると、生唾を飲み込んだ……。




