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母の抱擁

 その日の夜……。不死鳥ふしどり家……。


「ただいまー」


「おかえりー」


 オールブレイカーこと『不死鳥ふしどり 壊人かいと』がそう言いながら、リビングに行くと黒髪ロングと黒い瞳と無駄にでかい乳が特徴的な彼の母親『不死鳥ふしどり ひびき』がソファに座っていた。


「ねえ、壊人かいと。もしかして、また友達できたの?」


「な、なんで分かるんだよ。もしかして、力を使ったのか?」


「ううん、顔にそう書いてあったから」


「そ、そうか……。顔に書いてあったのか……」


 壊人かいとがそう言うと、彼女は両手を広げた。


「な、なんだよ」


「なんだかあなたのことを抱きしめたくなったのよ。ほら、おいでー」


「いや、俺は別にそういう気分じゃ……」


「おいでー」


 ニコニコ笑っている元世界最強の超能力者は相変わらず、白衣を着ている。

 母親というより、久しぶりにやって来た従姉妹いとこのような感じだが、ここで断ればベッドまでついてきそうだったので、彼は彼女の要求に応えることにした。


「じゃあ……行くぞ」


「うん♪」


 彼は彼女の腕の中に飛び込み、無駄にでかい乳に顔を埋めた。


「大きくなったわねー」


 彼女はそう言いながら、彼の頭を撫でた。


「な、なんだよ。大きくなっちゃいけないのか?」


「ううん、立派に成長してくれて嬉しいだけよ」


「そ、そうか……。けど、そうだな……。あの研究所を破壊してから、もう十年になるんだよな」


「そうね……。けど、あなたが無事に育ってくれて、お母さん嬉しいわ」


「今日はやけにご機嫌だな。何かいいことでもあったのか?」


「うん、まあね。あなたが三日以上同じ学校に行けたことなんて今までなかったから。ようやくいい友達ができたんだなって」


「なるほど、そういうことか……。けど、だからって寿司を頼むほどのことか?」


 彼は大皿の中に整列しているさまざまな種類の寿司がテーブルに置かれているのを見逃していなかった。


「私にとっては、それくらいのことよ。だから、今日はたくさん食べていいわよ」


「そうか……。なら、そろそろこの体勢をどうにかしてくれ。正直、恥ずかしくなってきたから」


「えー、まだそういう気分じゃないから、ダメー」


「なんだよ、それ……。いいから、離してくれよ」


「じゃあ、新しくできた友達のことを話してくれたら、考えてあげる」


「はぁ……分かったよ。けど、また女子なんだが……」


「あら、ついにモテ期到来かしら?」


「いや、そんなんじゃねえよ。ちょっと訳ありでな」


「あら、そうなの? じゃあ、話してちょうだい」


「ああ、分かったよ。まったく、相変わらず強引だな」


「大事な息子の友達がどんな人なのか知っておくのは、母親として当然のことよ」


「そうか……。じゃあ、最初から話すぞ」


「ええ、できるだけ詳しくね」


「はいはい……」


 彼は彼女に抱きしめられたまま、新しい友達『梅雨原つゆはら かすみ』について、話し始めた。

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