ハグ
次の日の放課後……。
いつものように壊人と泉が帰ろうとしていた時……。
「ねえ、不死鳥くん。少し時間ある?」
黒髪ロングと黒い瞳が特徴的な真顔女子にそう言われた。
「俺は今から帰るところなんだが……」
「田中さんと二人で?」
「ああ、そうだ。なんかおかしいか?」
「いいえ、おかしくないわ。けど、私は一昨日、この目で見たわ。あなたが田中さんをお姫様抱っこして正門から出て行くところを……」
一昨日……。携帯を買いに行った日だな……。
けど、同級生に見られているとは思わなかったな。
「田中さん、教室で少し待っててくれ。すぐに戻るから」
赤髪ポニーテールと赤い瞳と小柄な体型が特徴的な女子『田中 泉』は「うん、分かった。いってらっしゃい」と言うと、自分の席に座って宿題をやり始めた。
「ついてきて」
「ああ」
彼は真顔女子についていった。
屋上……。
「それで? お前は俺に何の用だ?」
「お前じゃないわ。『梅雨原 霞』よ」
「そうか……。じゃあ、梅雨原さんは俺のことをどこまで知っているんだ?」
「私が今知っているのは、あなたの身体能力が人間離れしていることだけよ」
「そうか……。じゃあ、それは見なかったにしてくれないか?」
「それは別にいいけど、一つ条件があるわ」
「条件?」
「ええ、そうよ。あなたがここに転校してくる少し前に私の両親を殺した犯人を……」
「俺に殺してほしい……なんて言うんじゃないんだろうな? 言っておくが、俺は殺し屋じゃないぞ?」
「それは知ってる。だけど、その犯人は妙な力を使って両親を殺した」
「妙な力?」
「ええ、そうよ。金属でできているものを操っていたわ」
「何かの見間違いじゃないのか? 超能力者じゃあるまいし」
「いいえ、違うわ。彼は両親の死を目の当たりにして怯えていた私にこう言ったもの。殺されたくなければ、俺のアジトに『オールブレイカー』を連れて来いって」
「そうか……。そんなことがあったのか。でも、俺はその『オールブレイカー』じゃないぞ?」
「それを今から確かめる。そのためにあなたをここまで連れてきた……」
その直後、金髪のモヒカンが特徴的な男性が彼の頭上から現れた。
「オールブレイカーちゃん、みーっけ!」
「くっ……!」
彼はそいつの攻撃をギリギリ躱すと、そいつを睨んだ。
「お前は梅雨原さんを利用して、俺をここまでおびき寄せたのか?」
「ああ、そうさ。その女はボスに目をつけられてるから、俺たちの命令には逆らえないんだよ。いやー、楽しみだなー。なぜって、お前を倒したら、そいつを犯してもいいって、ボスに言われてるからだよ。あーはっはっはっはっはっは!」
そうか……。梅雨原さんがずっと真顔なのは、こいつらに何をされても心を壊されないようにするためなんだな……。
「梅雨原さん、一つ約束してくれ。これから起こることを誰にも言わないって」
「……分かった。ただし、死んだら承知しない」
「ああ……分かった」
「話は終わったか? オールブレイカー」
「……いつでもかかってこい。お前の存在ごと破壊してやる……」
「そうか。なら、遠慮なく行くぜ!」
彼はそう言うと、オールブレイカーの重力を十倍にした。
「どうだ! これなら、力を発動できないだろう!」
「なるほど……重力使いか……。けど、残念だったな。俺はその力を発動させている超能力者を五感のどれかで認識できれば、どこにいようと力を発動できるんだよ!」
「な、なんだと! そんなの反則だ!」
「なんとでも言え。それが俺の力だ! オールブレイカー……発動」
「うわああああああああああああああああああ!!」
彼はそいつを存在ごと破壊した。
「よし、なんとかなったな。梅雨原さん、ケガはないか?」
「…………」
彼女は俯いたまま、じっとしている。
「おーい、梅雨原さーん、聞いてますかー?」
その直後、彼女は彼に抱きついた。
「おい、いきなりなんのマネだ?」
「ありがとう……。あと、ごめんなさい」
「え? なんで謝るんだ?」
「私、あなたのこと……騙したから」
「ああ、そういうことか。まあ、梅雨原さんが無事だったから、それでいいよ」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
「……そう」
「……ああ」
彼女は彼をさらに抱きしめると、自分の心が落ち着くまで、そうしていた……。




