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オールブレイカーの使命

 赤髪ポニーテールと赤い瞳が特徴的な女子『田中たなか いずみ』は後悔していた。

 超能力者の存在ごと破壊するオールブレイカーに……友達である『不死鳥ふしどり 壊人かいと』に『人殺し』と言ってしまったことに……。

 彼女は泣きながら、走っていた。

 もうこれで彼との関係は終わりだと思った。

 自分を下の名前を呼んでくれない……。ただそれだけの理由で彼に対して酷いことを言ってしまった。

 自分は人として最低だと思った。

 彼が殺したくて超能力者たちを殺しているのではないことを知っているのにもかかわらず、なぜ自分はあんなことを言ってしまったのか。

 彼女は夕日に照らされながら、走っていた。

 家に帰って、思い切り泣けば、明日にはきっと落ち着いている。

 だから、早く家に帰ろう。

 今の彼女はそう考えることしかできないほど、追い詰められていた。

 しかし、そんな彼女の願いは叶いそうにない。

 なぜなら……。


「組織の裏切り者め! このまちから逃げられるとでも思っているのか!!」


 突如として、現れた超能力者に行く手を阻まれてしまったからである。


「組織? 何のこと? 私、そんなの知らない! 人違いよ!」


 腹周りが大変なことになっている黒髪短髪の中年男性はそれを聞くと怒鳴った。


「嘘をつくな! お前がこのまちから出るためにオールブレイカーと共に行動していたのは知っているんだぞ!!」


「た、たしかに私は彼と一緒にいたけど、私は超能力者なんかじゃないし、このまちから出ていくつもりもないよ!」


「何? そうなのか? ならば、やつをおびき出すためのえさになってもらうとしよう。この俺の能力……『気体圧縮』の恐ろしさをその身に受けるがいい!」


 彼は圧縮した空気を彼女に放った。

 彼女はそれをギリギリのところでかわしたが、その直後に放たれた空気の弾丸が頬をかすめた。

 その部位に触れると、わずかに出血していた。

 それを見た彼女は腰が抜けてしまった。


「はーはっはっはっはっはっは! どうだ! 思い知ったか! 無能力者ができることなんて何もないんだよ! はーはっはっはっはっはっは!!」


 怖い……。体の震えが止まらない……。

 このままじゃ、私……この人にきっと酷いことされる……。

 今すぐここから逃げなきゃ……。

 けど、どこへ逃げても何の能力もない私じゃ、きっとすぐに捕まる……。

 どうすれば……どうすればいいの!


「いいね、いいね。その絶望にゆがんだ顔! 最高だぜ! オールブレイカーにもその顔を見せてやってくれよ? はーはっはっはっはっはっは!」


 オールブレイカー……。私の友達……。

 最強の超能力者……。

 壊人かいとなら、こんなやつ……一瞬で終わらせられる。

 けど、私は彼に酷いことを言ってしまった。

 今さら助けてなんて言えない……言っちゃいけない……けど……!


「……私はここだよ! あなたの心を傷つけた女はここにいるよ! だから、早くあなたの力で私を破壊して! オールブレイカー!!」


 泣きながら叫んだ彼女の顔は涙と鼻水でグシャグシャになっていたが、彼が彼女を見つけるのにいい目印になった。


「そんな大声で言われなくても……! 俺はお前のすぐそばにいるぞ!!」


 彼と彼女の間に着地したオールブレイカーは、彼女を守るように中年の男性を睨んだ。


「出たな! オールブレイカー! 俺の能力……『気体圧縮』で、今すぐあの世に送ってや……」


「オールブレイカー……発動」


「な、なに! うわああああああああああああ!!」


 彼は彼の存在ごと破壊した。


「……おい、立てるか?」


 彼は彼女の方に歩み寄ると、そう言った。


「……なんで助けに来たの? ……私、壊人かいとに酷いこと言ったのに……」


「男に襲われそうな女子高校生を見つけた男子高校生がその子を助けちゃダメなんて誰が決めたんだ?」


「……え?」


「俺のやってることは確かに人殺しかもしれない。けど、それで助かる命があるなら、俺は進んでそれをやる。ただそれだけだ」


「……壊人かいと


「……あー、あとな。田中さんのことを下の名前で呼ばないのは……その……言うのが恥ずかしいからだ。別に嫌いだからとかじゃないからな! 勘違いするなよ!」


 それを聞いた彼女は急に笑い始めた。


「な、なんだよ。俺なんかおかしなこと言ったか?」


 彼女は目尻に溜まった涙を拭うと、こう言った。


「……ううん、そんなことないよ。けど、最強の超能力者でも、そういう可愛いところがあるんだなって思っただけだよ」


「そ、そうか……。じゃあ、俺はもう帰るから、気をつけて帰れよ……」


 彼女は彼の手を握ると、ニッコリ笑いながら、こう言った。


「ねえ、ついでに家まで送ってよ。また誰かに襲われるかもしれないから」


 彼は少し頬を赤く染めながら、こう言った。


「わ、分かったよ。ただし、俺の目が届く範囲にいろよ」


「うん、分かった。じゃあ、家までよろしくね」


「ああ、任せとけ。い、いずみ


「無理に下の名前で呼ばなくていいよ。田中さんって呼ばれるのも別に嫌いじゃないから」


「そ、そうか……。分かった。じゃあ、これからも田中さんって呼ぶよ」


「でも、二人っきりの時くらいは下の名前でほしいなー」


「ちょっ、さっきと言ってることが違うぞ?」


「えー、私なんか言ったっけー?」


「お、お前な……」


「いやー、壊人かいとは面白いねー。一緒にいて飽きる気がしないよー」


「そうか……。なら、これからも友達でいてくれよ」


「うん、いいよ。けど、そろそろ私以外の友達も作らないと勘違いされるかもよー?」


「ん? それはどういう意味だ? おい、教えてくれよ。なあ、田中さん」


 二人は手を握ったまま、夕日に照らされ、オレンジ色に染まった道をトコトコ歩いて帰ったそうだ……。

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