第61話 香水だけは勘弁して
「さて諸君、この地下も当然、探検の対象だよな」
「勿論なのです」
真っ先に佳奈美が賛成する。
「でも何か出てきたら危ないんじゃ無いかなと」
「今の存在ほど大物で無ければ大丈夫だろう。違うか雅」
雅は頷く。
「ええ。最悪でもこの大麻があればほぼ大丈夫です」
ちなみに大麻はもう入れ物に入れ、ザックの横に仕舞ってある。
汚れると効力が落ちるからだそうだ。
「そんな訳だ。外で地下道装備に着替えて下へ突入。運が良ければ学校に通じている筈だ。ここも学校の施設だしな」
そういう事で一度外に出て地下道装備になる。
雨具を着込むとなかなか暑い。
「雨具と長靴はやっぱり着た方がいいですか」
「手彫り部分の地下を通ると泥だらけになりそうだからな。着た方がいいだろう」
という事でフル装備に着込む。
ランタン1個は先輩が持ち、もう1個は仕舞って僕のディパックに収納。
そして僕らは歩き始める。
まずは鍵を抜いて、扉を中から閉める。
念の為中から鍵が開くのを確認してから階段の下へ。
どこかで見たようならせん階段が延々と続いていた。
「何か間違いなく既視感を憶えるな」
「この部分の設計はきっと時計塔と同じなのですよ。
「朗人、測定値は」
「一・〇のままです。念の為警報を入れてあります」
そんな感じで延々と階段を降り続け、めまいがするような感じがした頃。
ようやく階段は終わりを迎え……
ビーッ、ビーッ。
測定器から警報音が鳴り響いた。
「現在〇・九。下がってきています」
「おいでなすったな」
先輩はそう言って雅と位置を変わる。
「遠慮無く頼む」
「わかりました。それでは」
雅は大麻を出す事も無く、両手で何やら妙な形を作って。
「オンサラバハンバダカノウダザラヤ、ソワカ」
何か奇妙な呪文を唱えた。
ふっと何かの気配が消え去った。
僕は測定器を確認する。
「測定器、一・〇に戻っています」
「今のはどう考えても神道とは違うのですよ」
佳奈美が無駄に豊富な知識で雅に突っ込みを入れる。
「効力があるものは気にせず必要に応じて使う。それが今の神道なり仏道ですわ」
さらっと雅はそう言って誤魔化した。
そんな訳で。
どう考えても神道系の筈の雅に密教系の真言を唱えさせる事3回。
僕らは微妙に見覚えのある扉に辿り着いた。
扉というよりは点検口という感じだろうか。
「順当に行けばこれで学内だな。朗人、数値は大丈夫か」
「測定器、一・〇です」
という事で神流先輩は一度ランタンを下に置いて点検口を開ける。
ヘッドライトのか細い光に写し出されて見覚えのあるコンクリート製地下道が確認出来た。
前に化け物退治をワンゲルがやった場所だ。
先輩はランタンを持って点検口を超える。
「面倒だから近くの出口から脱出するぞ」
「了解なのです」
相変わらず佳奈美が一番返事が早い。
でも実際、僕もそれに賛成だった。
きっと雅もそうだろう。
そんな訳で大学部の人文教育棟西側。通称HB出口から僕らは地下道を抜け出る。
先輩の言う通り、確かに地下道の非コンクリ区間は結構色々と汚れた。
雨具長靴ヘルメットまとめてゴミ用大型ビニル袋に入れてディパックへ。
そして階段を登って出口を出て、外へ。
「午前十一時三十五分、探検終了ですね」
そう言って雅がいつものメモ帳にメモした。
「さて皆の衆、これからどうしようか。取り敢えず飯でも食って、そして長靴や雨具についた泥を洗いたい処なのだが」
先輩がそういったところで。
「メールだよ、メールだよ、メールだよ、メールだよ……」
微妙なメール着信音が鳴り響いた。
先輩が内容を確認。
そしてにやりと笑う。
「先生からだ。そろそろ回収依頼のメールが来ないか待っています。お腹も空きました。装備の取り込みもあります。だと」
おいおいおいおいおい。
「それって食事作って、装備取り込めという事ですか」
「ちょうどいいじゃないか。あそこなら風呂で雨具や長靴の泥を落とせるし」
おい先輩ちょっと待った!
「着替えて、更に着替えを用意してくればいいのですね」
「確かにそうですね。雨具や長靴を洗って乾かせますし」
何か二人は完全に賛成モードになっている。
「よし決定だ!準備もあるだろうからこれから三十分後。着替えて着替えも持って寮の前に集合。ネグリジェとか必要な奴はそれも用意しておけよ」
おいおい先輩。
「寝るときに身に纏うのはシャ●ルのナンバー五だけ、そんな場合はどうするればいいのですか」
おいおいおい佳奈美何だそりゃ。
「そりゃ香水を持ってくるに決まっているだろう」
「マリリン・モンローですね」
本当にそんな事するなよ、お前ら。
そんなこんなという感じで、そして……




