第49話 謎のアドレス
また神流先輩を肩車して蓋を開けて縄梯子をセット。
そうして無事大学部の人文教育棟本館一階へと戻ってくる。
「何か朗人、顔が赤いのです」
「ちょっと暑かったせいだろう。雨具を着込んでいたから」
誤魔化しつつ地下道装備を脱いで靴を履き替えた。
「ついでだからコンビニで明日の昼ご飯の買い出しをしておこう」
理化学実験準備室へ向かう途中、神流先輩がそう宣言。
気がつかなくていいのにと思ったのは内緒だ。
「賛成なのです」
「いいですね」
僕以外の賛意により、厚生棟に入っているコンビニへ。
「明日は何を食べたいでしょうか」
「あまり高いのにはしないでくれよ」
「1人五百円として二千円以内だな」
「了解であります」
そんな感じでコンビニ内へ。
「お、ラム焼き肉の冷凍があるのです」
「二百グラムで三百九十八円だと結構かかるな、却下」
「厳しいのです」
そんな感じで色々考えながら冷蔵・冷凍ケースの前を行き来して。
そして僕はちょうど手抜きによさそうなものを発見した。
新発売か何かで少し値引きしているのもポイントが高い。
「つけ麺なんてどうですか」
「悪くないな」
先輩はパスしたぞ。
「そうですね。確かに寮では食べませんし」
「なら私もそれでいいのですよ」
なし崩し的に決まった。
つまり誰も案を持っていなかったようだ。
そんな訳でまずはつけ麺生麺入り二人分の袋をちょっと多めに三つ取る。
「足りないのです」
佳奈美に一袋追加された。
「こういう場合の一人前は少ないようですしね」
雅が一袋追加。
「どうせなら景気よくもう一袋行こうぜ」
神流先輩が更に一袋追加。
合計六袋十二人前。
一人三玉計算だ。
お前ら本当にそんなに食べるとかと言いかけて今日の昼食を思い出す。
確かにこの三人なら食べるかもしれない。
それに味玉子とかメンマとかチャーシュー代わりのハムやネギも追加。
結果として弁当と同じ位の費用が消費されることになってしまった。
そんな訳で理化学実験準備室に到着
「さて、このアドレスをどうするかだけれどな」
神流先輩の台詞に佳奈美が反応する。
「パソコンをお借りしていいですか」
佳奈美、やる気満々な模様。
「いいぞ。これは元々ここの備品だしな」
神流先輩と佳奈美が席を入れ替わる。
佳奈美は何か知らないWebページを呼び出し、先程書かれていたアドレスをそこに入力した。
「これは目的のアドレスにウィルスとか有害なものが含まれていないか調べるページなのです。うん、特に問題は無さそうなので、ダウンロードしてみるのです」
佳奈美が操作すると画面上に白いアイコンがダウンロードされた。
「このパソコンでは3Dデータを表示できるソフトが無いようなのです。フリーの3D・CADを入れても問題無いですか」
「備品だけれど誰も管理していないからな。ユーザもアドミニのまま使っているし問題無いだろう」
「了解であります」
もうこの辺りは佳奈美に任せておくしかない。
彼女は何か英語のWebページを開いたり色々作業をしている。
「佳奈美は3Dデータを扱ったことが在るのか?」
「こんなのは大体想像と感覚で何とかなるものなのですよ」
おいおいおい。
でも佳奈美は本当にそれで何とかしてきたのを僕は知っている。
そんな訳で佳奈美の操作を皆で見守る。
そして約五分後。
「やっと表示できたのです」
佳奈美の言葉で皆が画面を覗き込んだ。
先程の3Dデータが斜め上から見た形で表示されている。
形を見れば何かは一目瞭然だ。
「これは鍵だな」
「今時見ないシンプルな鍵ですね」
神流先輩や雅が言う通り昔ながらの形をした鍵の立体図が画面に表示されていた。
佳奈美も頷く。
「私も鍵だと思うのです。形と言い大きさといい、間違いないと思うのです。でもこの形を出力するには3Dプリンタが無いと無理なのです。業者に頼んでもいいのですが時間がかかるのです」
「3Dプリンタならあるぞ」
神流先輩があっさりとそう言う。
「本当ですか」
「この部屋に入らなくて隣の物理実験室の壁際に置いてある。この部屋からなら鍵無しで入れるぞ」
「ちょっと調べてくるのです」
佳奈美はダッシュでドアに駆け寄り、鍵を開けて中へ。
それを見送る僕ら三人。
「佳奈美さん、凄いですね。何か何でも知っているし」
「本人に前に聞いたんですけれどね。大体の機械は何となくで使い方がわかるらしいです。それこそパソコンでも何でも」
「私、スマホの使い方を覚えるのに三日近くかかったんですよ。でも今でも電話とメール以外の使い方は怖くて出来ないです。何かウィルスとか入ってきそうで」
「それってスマホを使っている意味あるのか?」
そんな事を話していると。
「この機械で大丈夫なようなのですよ」
佳奈美が戻って来た。
「こっちからデータを抜いて向こうへ持って行くのです。USBメモリがあれば貸して欲しいのです」
「あるぞ」
先輩が出したのは僕が前に合宿のメニューを持ってきたときの奴だ。
「お借りするのです」
佳奈美はパソコンからUSBメモリでデータを抜き出して向こうの部屋へ。
操作は向こうの部屋にあるノートパソコンでするそうだ。
「この形状ならエンプラでも何とか強度的に大丈夫だと思うのです。この大きさなら時間は一時間程度で大丈夫だと思うのです」
声だけ聞こえる。
「とすると、今日は佳奈美の作業で終わりにした方がいいな。崖を登って塔を探すとなるとそこそこ時間がかかるだろう。崖を下りるときに暗くなっていたら洒落にならない」
「そうですね」
「佳奈美はそれ、ずっと横で見ている必要あるのか。明日まで放置で大丈夫なら今日は終わりにしようぜ。どうせGW中は誰も来ない」
「了解なのです。作業終了後自動で電源断にしておくのです」
そう言ってまたパソコンを操作している音が聞こえる。
一分ほどで佳奈美が部屋に戻ってきた。
「これで明日は鍵も用意できるのです」
「なかなかいいペースだな。GW後半二日目でもう最後の謎突入か。学園の他の謎もピックしておいた方がよさそうだな」
「そんなに色々あるのですか」
「遊び場所には困らないんだな、ここは」
神流先輩はそう言ってにやりと笑う。
「まあそんな訳で今日は終了。明日も九時から宜しくな」
そんな訳で片付けて解散となった。




