第46話 未知への突入
そんな訳で大学部の人文教育棟本館。
念の為五階から順番に見ていく。
見る場所は中央部付近限定だ。
「それぞれの研究室の中は無視していいですよね」
「見たくても入れないだろう。だから当座は無視だ」
でもそうなると調べる場所は廊下と階段しかない。
必然的に調べる物も少ない訳だ。
結果、収穫も全く無いままに地上二階以上の探索は終了した。
所要三十分もかかっていない。
そして一階部分もある場所を除けば何も無かった。
その場所とは。
「ここの蓋が気になるのです」
佳奈美が指さした中央部のらせん階段下にある蓋だ。
「理化学実験準備室にある蓋と同じような感じなのです」
「ここから地下道には入れる入口は確認されていないな」
そう言いながら先輩は自分のザックを下ろす。
中から紙を人数分取り出して僕達に渡した。
「地下道案内図の最新版だ。各部や同好会が調べた結果を新聞部でまとめている」
なかなかオープンな環境だなと僕は思う。
最初に見せられた地下道案内図は新聞部のサイトだったのだろうか。
そう思いつつ紙を確認。
題は『秋津学園地下道マップ・2019年4月版』とある。
内容はその通り学内の地下道を図にしたもの。
この前通った部分も出た出口も地点略称付きで全部載っている。
しかしこの本館中央付近から入る出入口は載っていない。
「どれどれ」
先輩は理化学実験準備室の蓋と同じ要領で蓋を開けた。
手持ち型の電池ランタンで中を照らす。
横から僕ら三人でのぞき込む。
理化学実験準備室の下と同じような感じの空間が見えた。
「念の為に地下道装備にした方がいいだろうな」
「ここでですか」
休日とはいえ、思い切り学内の中心部分だ。
「これくらいで文句を言う輩はこの学園にはいない。安心しな。ああ、その前に」
先輩は自分のザックから何かを取り出した。
「これは朗人に預ける。念の為持っていけ」
ヒューム値測定器だ。
確かにこれがあれば少しは安心。
少なくとも化け物が近づいた兆候はわかる。
早速電源を入れてみて。
そして思わず僕はぎょっとする。
デジタル数値が一・七五!
念の為指数表示を確認したが〇一で正常。
つまり一・七五という事だ。
「数値が何か異様に高いです!」
「えっ」
驚く佳奈美と雅。
でも先輩は何でも無い事のように口を開く。
「ああ悪かった。それは心配する必要は無い。私が持っていたからそうなったまでだ。朗人が三分も持って歩けば正常値になる」
つまりいきなり化け物が出たりする事は無いと。
思わずほっと一息。
そしてちょっと考える。
今の状況からするに、先輩はヒューム値一・七五以上という事か。
でもまあ魔女だからそんなものなのかもしれない。
この前のスライムのようなものよりは高くて当然だろう。
そんな訳で装備変更開始。
上下雨具を着てヘルメットにヘッドランプを装着。
長靴に履き替え、靴を入れたビニル袋をデイパックに入れたら完成だ。
「朗人、ヒューム値測定器はもう正常になったな」
「はい」
表示は1.0を指している。
先輩は縄梯子を入口にセットした。
「さあ行くぞ。未知の世界への第一歩だ!」




