第40話 最後はお約束
「つまり夜中トイレに行って、戻ってきたらもう寝る場所が無かったと」
「そうなのです。だから仕方なく寝袋とマクラを取って避難したのです」
理由も状況もわかった。
確かにあのテントで4人寝るのは狭いだろう。
でも。
「照れなくてもいいぞ、正直に言え。夜のお供に引っ張り込んだと」
この扱いは納得できない。
「大体この事態が起きたのは誰のせいですか大体」
「寝ていたから知らんな」
容疑者その一はシラを切っている。
「ひょっとしたら私でしょうか」
「雅は真っ直ぐ寝ていたのです。ただその反対側と私の反対側の寝袋が斜めになっていたのです」
「もう証拠は残っていないぞ、残念ながらな」
容疑者その一は得意げだ。
「先生の立場としてはあまり良くないと思うのです」
いや待て、佳奈美の証言を考慮するとこの人は容疑者二だ。
「先生も有罪です。大体マミー型シュラフに入った状態で何が出来るんですか!」
まあこんな感じで朝は始まった。
勿論早朝なので小声ではある。
一応周囲は明るく、起きている人もそこここにいるのだが。
まあそんな生産性がない論議してもしょうがない。
僕は朝食の準備にかかる。
計画ではスパゲティだったのだが買い物段階でちょっと計画変更。
お湯を沸かしてペンネを茹でる。
長さがないから小さい鍋でも茹でやすい。
茹でたお湯はスープに再利用しようかと思ったけれど味を見て廃棄。
ここはキャンプ場だから大丈夫。
熱いままのペンネを先輩厳選のレトルトソースに絡めつつ、もう一つの鍋でベーコンを炒めてその上に投入。
更に余ったチーズも全部投入だ。
その鍋はガスから離して佳奈美に混ぜ混ぜして貰うことにする。
あとはスープだ。
小さい鍋で湯を沸かす。
即席スープの素と余った増えるわかめを入れた紙コップに注げば完成だ。
ちなみに昨日七合炊いた御飯は全部消費してしまった。
残っていればスープおじやにしようと思ったのだけれども。
先生の「いただきます」の号令で食事開始だ。
スプーンでペンネを食べるという微妙に食べにくい状況の中。
「それにしても朗人、今回の食事は無難によく押さえたな」
と先輩からのお褒めの言葉から始まる。
「そうですね。今までの登山で一番まともな食事をいただきました」
先生、だから今回は登山ではないですから。
「これの栄誉をたたえ、朗人には万年食事当番の地位を与えよう」
いやいらないですそんな地位。
それにだ。
「だいたい学内探検部に食事当番は必要ないでしょう」
「また合宿をするかもしれないのです」
佳奈美が余分な事を言う。
それに釣られて先生まで。
「そうですね、夏は南アルプス縦走を五泊六日位で」
「それはワンゲルでやって下さい」
もうこんな体力系は充分だ。
「でもあの沢登り、楽しかったですね」
雅は体力が特別製のようだからそう言えるんだろう。
僕としてもう勘弁して欲しい。
今でも昨日のダメージが肩に脚にと。
そんな訳で皆の状況を聞いてみる。
「ところで筋肉痛、皆さんは大丈夫ですか」
真っ先に佳奈美が反応した。
「肩がつらいのです。ふくらはぎも」
「だよな。他に腕も微妙に来ているしさ」
僕と先輩と佳奈美とは話が合うようだ。
うんうんと三人で頷きあう。
一方で。
「そうですか、私はまだ大丈夫なようです」
「皆さん普段の鍛え方が足らないようですね」
そんな意見の方もいるらしい。
先生もそうだが、やっぱり雅の体力も特別製。
うん、喧嘩しないようにしよう。
する気は無いけれど。
「ただ、これで終わりとなると何となく名残惜しいのは確かなのです」
あ、でも確かにそうかもしれない。
「寮に無事帰るまでが合宿です」
先生、その台詞はお約束過ぎます。
学園探検部の新人歓迎合宿は、こんな感じに幕を閉じたのだった。




