第39話 夜の侵入者
その後も色々怪しく極限な小暮先生流登山談義を聞いた後。
「そろそろ就寝にしましょうか」
というので僕は自分のテントへ追い出される。
マットを敷いてシュラフを出し、着替えの袋を枕に。
ちなみに寝袋はマミー型という足部分がすぼまっているタイプだ。
マミーとはミイラのこと。
要はミイラが入っている棺桶形だと思えば間違いない。
小暮先生に言わせると、この方が場所も取らず寒さにも強く山向きだそうだ。
ここはキャンプ場だけれども。
こっちは二~三人用のテントというけれど、実用的には一人用だろう。
横に荷物を置いてマットを敷けばもう目一杯に近い。
しかしこのテントも雪山で使えると聞いたけれど本当だろうか。
確かにカバーと二重になっているが、所詮テントは薄い生地。
あっさり凍死しそうな気がするけれど。
そんな事をつらつらと考えているといつの間にか意識が落ちていたらしい。
そして……
気づいたきっかけは感触だった。
何か温かい重い物が横にくっついている気がする。
意識が目覚める。
目を開ける前に確認。
間違いない。
温かくて重くて柔らかいものが僕の横にのしかかるようにしている。
少しその重い物を避けて離れて。
そして目を開ける。
闇に目が慣れたせいかうっすらテント内が見える。
そして横には。
間違いない。
二度確認した。
こいつは佳奈美だ。
シュラフにくるまって熟睡していやがる。
何だこれは。
どうしてこうなった。
張本人が熟睡中なので何も判明しない。
これは……
佳奈美と言えども一応は女の子だ。
真横にいられると気にならない訳ではない。
思い切り呼吸とか感じるし。
くっついている部分がシュラフを通しても熱く感じる。
でも外は暗い。
そして寒い。
テントの中でもそれはわかる。
ましてテントの外なんて。
結論はひとつ。
諦める事だ。
この場は諦めて気づかないふりをしよう。
そうでなくても昨日は疲れて眠い。
休息、大事。
そう僕は合理的に判断して。
そして目を閉じて……
これはきつい。
なかなか眠れない。
佳奈美の息かかかるのが気になったままだ。
それだけ近くにいるという事実を思い起こさせる。
女の子だなとか妙な意識をしてしまう。
そして間近で顔を確認したのがまた失敗だ。
佳奈美、実は結構顔立ちが結構整っていやがる。
しかも佳奈美を避けた時、自分の位置が銀マットからずれてしまった。
現在マットは佳奈美がほぼ独占中。
シュラフの柔らかさでは河原の砂や小石の感触に対抗できない。
しかも地面が冷たいし。
悲しい結論。
眠いのに眠れない。
マットに乗ろうとすると佳奈美とくっつかなければならないし。
そうすると佳奈美の気配が色々気になるし。
そんな訳で結構長い間、僕は孤独な戦いをする羽目になるのだった。




