第35話 登山者の常識? キャンプの非常識?
テント二つとも特に非常に簡単に立てられた。
要は、
① はめ込み式になっている金属ポールをはめていって長い棒にする。
② テント本体の端に通して、ポールをテントに固定する。
この時点でポール2本が上向きに弧を描いて、かつ真上から見るとX字に
クロスしてテントの支柱が完成する。
③ テント本体についているフック数カ所をポールに引っかける。
これでテント本体は完成。
④ 最後に上からカバー(フライシート)を掛ける。
雨や霜等を避け保温効果があるそうだ。
という感じ。
人数がいればあっという間だ。
なお男性用テント、つまり僕用の小さいテントも横に立てた。
これもちょっと違うけれど簡単だった。
違うのはポールと本体の関係。
ポールに本体を吊り下げるか、本体にポールを通すか。
最後にテントから出ているロープを伸ばし、その辺から持ってきたちょっと重い石で固定してフライシートを張って終了。
そうして荷物をテントの中に入れる。
「それにしてもうちのテント、周りのより小さいのです」
確かに高さも広さもひとまわり以上小さい気がする。
先生は頷いた。
「ええ、うちのテントは本来は登山用ですからね。大きい方はダン●ップの、小さい方はエス●ースのそれぞれ四シーズンの登山用です。雪山でも使えますよ。
少し小さい代わりに軽量かつ風に強い構造です。風対策で背が低い分余計に小さく見えるのです。
さて、それでは着替えとか持って下さい。温泉に行きますよ」
シャッキーン!
ゾンビが更に一段階蘇生する音が聞こえたような気がした。
「よし、行くのです」
「温泉、いいですね」
「少しでも筋肉をほぐさないとな」
それぞれの思いを胸に歩き始める。
ただ先頭を行く先生はどんどん坂を登っていく。
ロッジを超え、受付を超えて更に駐車場を後に……
「ちょっと待って下さいなのです。どこまで行くのですか」
「温泉ですよ。勿論」
「もうキャンプ場は過ぎてしまったのですけれど」
「ええ」
先生は頷いて当然のように続ける。
「温泉はキャンプ場の外ですよ。徒歩十分位ですね、いまの足ですと」
「ええええええ……」
2人ほど崩れ落ちたような気配がした。
◇◇◇
温泉の効果は絶大な模様だ。
一時間後にはゾンビも人間へと戻っていた。
テント場に戻ってみる。
既に周りは食事準備を開始している模様だ。
テーブルやバーベキュー台を出して派手に始めているところもある。
「それではうちも始めましょうか」
先生がそう言って荷物を出してきた。
「先生、テーブルがないけれどどうすればいいのですか」
「そこのザックの背中部分に板が入っています。それを平らになるよう下に敷いてからガスを乗せて下さい。そうすれば鍋等を乗せても安定します」
「何か貧乏くさいのです」
「登山の場合はこれが普通です」
いえ先生、これはただのキャンプなんですけれど。




