第3話 実用新案 探索者ホイホイ
「バスケ部どうですか」
「新聞部です」
「男女混合テニス部は」
「ラクロス部です」
「手相研究会じゃ」
「ヨーガで内面から美しく……」
「漫研で人生変えないかい」
「聖書研究会です。貴方は神を……」
「親鸞聖人の教えに……」
「エコエコアザラク……」
「イア、イア、ハスター!」
何か違うのが色々いるような気がする。
でも気にしてはいけない。
気にするとつけ込まれる。
しかし生徒数が少ないのにどうしてこんなに勧誘が多いのだろう。
微妙に気にならないでもない。
掻いて躱して無視してと。
何とか列を抜け出して、やっと寮やコンビニ等のある生活ゾーンまできた。
ここにはもう勧誘の皆さんはいない。
ほっと一息つこうとしたその時、僕の制服が引っ張られた。
佳奈美が向こうに行こうとしている。
何かを見つけたらしい。
大体彼女が見つけるものに碌な物は無い。
昭和六十二年製の五十円玉とか白いたんぽぽとか、僕には価値のわからない物ばかりだ。
その道の趣味者にはわかるかもしれないけれど。
でも放っておくと彼女は何時までも気にする。
何度も過去の話をされる事になる。
だから一番合理的な解決法は彼女の思うままにすること。
そんな訳で彼女の行くままに、僕も歩いて行く羽目になる。
本当はこのまま彼女を自由に放っておいた方が楽だろう。
でもあとで面倒な事になると。
何故か収拾つけるのは何故か僕の役目になる。
少なくとも中学時代はそうだった。
世の中には不幸な巡り合わせとか人間関係という物が存在するのだ。
この場合、それは僕と佳奈美の関係。
彼女が見つけたのはどうやら緑地帯に置かれている石のようだ。
御影石のような材質の四角錐。
大きさは底辺五十センチ、高さ五十センチというところだろうか。
「この石がどうかしたのか」
「プロヴィデンスの目なのです」
彼女はそう言って石の片面を指さす。
確かにその面の中心には人間の目のような物が掘られていた。
「それで」
「これがこんな処にある意味がわからないのです」
そう言われても。
そもそもそのプロ何とかの目って何なんだ。
「気にする人は気にするものなのだよ」
ふと近くで声がした。
とっさに振り向く。
僕より少し背の高い細身の女性がそこに立っていた。
年齢的に高校生、きっと先輩だろう。
その場所にはさっきまで誰もいなかった、と思う。
佳奈美がとっさに僕を盾に彼女の反対側に回る位、不自然な出現だ。
「驚かせたのなら悪かった。よく気配が読めないと言われるんだ」
そう言って彼女はプロなんとかの石に手を伸ばす。
石を掴んで真上に持ち上げると軽々と持ち上がった。
下に木製の杭が四本ついている。
「実はこれ、プラスチックで作ったダミーなのだな。別名探索者ホイホイ」
何なんだ、この展開。
「実は私は学内探検部でな。部員募集のためにこの罠をしかけたのだよ」
「そんな罠があるんですか」
ついそう突っ込んでしまう。
「でも引っかかっただろう、今」
あ、確かに。
「しかしまた何でそんな妙な部員募集を」
先輩はにやりと笑う。
「探検にはそれなりのセンスが必要でな。こういう怪しいものを怪しいと気づかないようでは探検家の資格は無いのだ。
それにプロヴィデンスの目を罠にした理由もちゃんとある。君はうちの学校の校章を見ただろう」
校章って何か星形のような奴だっけ。
「ダビデの星なのです」
佳奈美がぼそっと言う。
まだ警戒を解いていない模様だ。
「正解だ。籠目紋とも言う。要は六芒星だな。プロヴィデンスの目はダビデの星と組み合わさっていることも多い。だから気づく人は気づくようにここ、学校部分と生活ゾーンとの境付近に置かせて貰った。
この2つの符合、気になる人は気になるだろう、そう思ってな」




