第19話 現実性のゆらぎ
「さて、これで単語説明は終わりだ。次はさっき地下道から脱出した理由だな」
そうだ、それも説明がまだだった。
「さっきヒューム値が下がったと言っただろう。
ヒューム値が下がる理由というのはだいたい三つだ。
○ 私のような種別持ちが魔法のような力を使ったか
○ 現実性を下げるような出来事が発生してしまったか
○ 現実性を下げるようなものが近くにあるか
という感じだな。
例えば本物の魔術書があれば近くのヒューム値は下がる。
もっと極端な事を言うと、大人数が犠牲になる事故、そんなのが発生したらそれだけでヒューム値が下がる。こんなの現実であって欲しくない、現実ではたまらない、そう思う人が多ければそれだけでヒューム値は下がるんだ。
良く出来た映画なんかでもちょっと位はヒューム値が下がったりする。まあ、そんなものだ」
僕が思っていたより現実とは脆弱なものらしい。
少なくとも先輩の説明では。
「それでさっきの地下道では何が起こっているのですか」
「確認していないからなんとも言えないな。私みたいな種別持ちが能力を使わざるを得ない状態になったのか。ヒューム値を下げるような化け物が出てきたか。星辰とかの関係で何か出来事が発生したのか。
ただヒューム値が低い場所へ慣れない人間が行くと危険だ」
「何故なのですか」
「ヒューム値が低すぎると、ヒューム値1の普通の人間でもその場の現実を変えられるからな。
現実改変は、
○ その人間が持つ固有ヒューム値と
○ その空間や対象のヒューム値の
差が大きいほど発生しやすい。
大体固有ヒューム値が対象ヒューム値の倍を超えるあたりが目安かな。例えば私の固有ヒューム値が十ならば対象ヒューム値が五以下のものに影響を与えられる。ヒューム値一の一般人でもヒューム値〇・五以下の空間にいれば色々と出来てしまう訳だ。
で、普通は妖怪だの化け物だのを想像して創造してしまう。それによって更にヒューム値が下がり化け物が更に増え……
だから慣れていない人間がいる場合はヒューム値のあまり低い場所に行かない方がいい。それでさっきは安全の為脱出した訳だ」
神流先輩はにやりと笑う。
「そろそろ地下道の疲れも取れただろう。そこで提案だ。
これからさっきのヒューム値低下の原因を探りに行ってみたいか。勿論危険な事はしない。基本的には地上から調べてみるだけだ。どうせさっきのおっさん顔も色々やっているだろう。その辺のお手並みも拝見といこうじゃないか。どうだ、皆の衆」