第18話 カラーコンタクトの防護壁
「さて、それでは次の単語、種別Wの説明に移るか。
それではちょっと失礼」
そう言って神流先輩は目に手をやりカラーコンタクトを外した。
この前と同じだ。
「まあこのカラコン、既にバレているようだけれどな」
佳奈美も雅も頷く。
「それぞれ事情がありますでしょうから」
「個人的には外した方が自然だと思うのですよ」
二人の反応に先輩は微笑んだ。
「ありがとう。そんな反応ばかりなら私も楽なんだけれどな。さて」
昨日僕が夕食の時にみたものの再現だ。
右手の平の上に火球が出現する。
「おお、これは本物なのですか。熱を感じるのです」
「一応本物だ。熱を発していて触れるとただじゃ済まないという点ではな。さて朗人。今の測定器の値は幾つだ」
火球の方に視線を向けていたから気づかなかった。
慌てて視線を測定器に戻す。
明らかに今までと違う数値が表示されていた。
「〇・七三、値は〇・七三です」
「という訳だ」
昨日同様に火球はふっと消える。
痕跡は何も残っていない。
僕は測定器の表示を確認する。
「少しずつ値が戻ってきています」
「このまま放っておけば一に戻る。ご苦労だった。もう席に戻って良し。測定器はスイッチを切ってその辺に置いておけ。またどうせ使うだろうからな」
測定器を置いて僕も着席する。
「今の現象の説明をしよう。
私がこの世界本来の法則と違う方法でさっきの火球を生み出した。
結果、周辺の現実性が変化させられてヒューム値が下がった。
そういう事、つまり私は現実性を変化させる能力を持っている。
種別W、魔女としてな」
実は僕はあまり驚かなかった。
というか、なんとなく予想していたのだ。
昨日あの火球を見せられてから。
そして地下道探索中に出た種別Wという言葉。
あのような事が出来てWがつく単語。
やはり真っ先に思いつくのは魔女だろう。
「凄いのです。他に何か魔法が使えるのですか」
身を乗り出す佳奈美とちょっと何か考え込んでいる雅。
「まあ、その辺はおいおいってところだな。あとこの学園内でも種別については知らない人間が多い。だからその辺は気をつけとけ。さっきのおっさん顔は例外だ。奴は奴で別の種別をカミングアウトするマーカーを付けていたからな」
神流先輩もおっさん顔だと思ったんだな、というのは別として。
「なら他にも種別はあるんですね」
「ああ、色々な。ただカミングアウトするしないは本人の判断だ。
私もここではあっさりバラしたけれどな。クラスとかでは一切この件については話していない。面倒だからな」
雅が小さく頷いたのが見えたような気が売る。
今の言葉はひょっとして……
そう思い形作っていく想像を取り敢えず僕はそこで止めておく。
今はまだこれは僕の考えすぎだと思っておこう。
そう、今の段階では。