第15話 探索と言えば
地下道そのものに照明は無いが、神流先輩所持の電池式ランタンがかなり明るい。
おかげで視界には困らなかった。
ランタンの動きで影が動くのがちょっと怖いけれども。
しばらく歩くと天井が急に低くなる。
僕が何とか身をかがめないで通れる高さ。
だから大体百八十センチくらいだろう。
「ここから高校校舎の建物外だ。すぐ地下道本坑につく」
神流先輩は僕より身長が高いので腰をかがめている。
「何か本格的に探検という感じになってきたのです」
悔しいが佳奈美の気持ちが良くわかる。
僕もそうだからだ。
低くなった場所から僕の歩幅で五十歩程度で左右に伸びる地下道に合流した。
また天井の高さが元に戻る。
「この右方向は中学部の教室棟までで行き止まりだ。脇道も含めて全て調査済みで不明場所は無い。
だから左に行くぞ」
そんな訳で、左へ。
しばらく歩くと右方向への分岐があった。
理化学実験準備室方向への分岐と同じように電線やパイプが別れている。
「ここは講堂への分岐だ。講堂裏の楽屋にある蓋の下まで行ける」
「何か随分歩いた気がしますけれど。それでもまだ講堂なのですか」
「地上だと高等部から講堂まで一分もかからないですよ」
雅も佳奈美も随分歩いた感じらしい。
まあ僕もそうだけれど。
「見通しきかないから一歩も短くなるしな。地上の数倍距離を感じるんだ」
先輩はそう説明してくれる。
なるほどと思うけれど、やはり距離感は変わらない。
さらに歩いて高等部教室棟分岐、図書館分岐を過ぎる。
「何かなかなか進まないのですね」
「まあ探検なんてこんなものさ。さて、ロードオブザリング到着だ」
十字路だ。
先程までの分岐と違うのは、左右方向もこの地下道と同じ大きさである事。
それにしても何故指輪物語なのだろう。
疑問はさっさと聞くに限る。
「何か指輪物語に関係する場所なんですか」
先輩が首を横に振った気配がした。
「いや、大学講義棟をや人文教育棟をぐるっとまわる環状道路の下。だからロードオブザリング。ちなみにここは南東角だ」
駄洒落かい!そう思った時だ。
「何か音が聞こえないでしょうか」
そう言われると何か水音と足音のような音が……
「やっぱり出たか」
神流先輩、主語を言わないところがすごく嫌だ。
「何が出たのですか」
雅の不安そうな声。
そう、それを言ってくれ。
「地下道探検につきものの、アレさ」
だからちゃんと言ってくれ。
音は次第に近づいてくる感じだ。
じゃばじゃば、ハアハア。
息づかいまで聞こえる気がする。
そしてふと右側から何か光のようなものが見えた気がした。
あれは!