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第13話 種明かしはしない

「でも今のあの二人にはこういう楽しさも必要だろ。今まで色々セーブしてきた感じだからさ。羽目を外すのも経験だ」

 先輩としてまともな事を言っている気もする。

 ただし一つ重大な問題事項を提起させて貰おう。

「その分僕が犠牲になっている気がするんですけれど」

「運命だ。潔く受け入れろ」

「嫌です」

 僕にも人生を選ぶ権利はあるはずだ。

「いいじゃないか。二人とも可愛いし綺麗だし。両手に花って感じだろ」

「先輩も含めて外見には特に文句を付けません」

 うん、それは認めてやろう。

 事実を認めないほど僕は偏狭ではない。

「おお、それは求愛の表現かい」

「ただし内面変人は勘弁して下さい。佳奈美だけで手一杯です」

「一人も二人も三人も大して変わらないだろう」

「大違いです。認めないで下さい。あと自分まで勘定に入れないで下さい」

 全く。


 確かに二人とも悪い奴じゃない。

 顔だって悪くない。

 雅はそれこそ日本風ないかにもという感じの美人だし、佳奈美も幼児体型だけれどおとなしくしていればかなり可愛い方だ。

 ただ一般人の僕には他が正直オーバーキャパシティなだけで。

「でもその割に色々面倒見がいいじゃないか。そもそもどうして佳奈美とくっついているんだい。完全な幼馴染みでは無いようだし」

「中学の時に感じたんですよ。何か仮面を被っている感じだなって」

 悲しいかなその時の思いは今でも覚えている。

「何か見せかけのような笑い方をするなって。本当はもっと素敵に笑えるんじゃないかなと思って」

 そんな訳で青臭い議論ふっかけたり化学実験部に誘ったり。

 そうしているうちにいつの間にか懐かれてしまった。

 そして温和しくて覚めた笑顔をしていた少女。

 彼女はいつしか化学実験部のバルカン半島になってそして今、ケーキとフルーツを漁っている訳だ。


「なら同じ視線で雅の事も見てやりな。あれも別の意味で問題を起こさないよう、いままで隔離環境で育ってきたんだ。やっと人里降りてきてあの学園というのも可哀想だが、朗人がいれば何とかなるだろう」

「何か雅の事を知っているんですか」

 神流先輩はにやりと笑う。

 魔女の微笑、そんな感じに。

「苦労をかけるお詫びに一つとっておきを見せてやろう」

 そう言って神流先輩は左目に手をやる。

「これをやるときは準備が必要でな」

 何をしようとしているのかはすぐわかった。

「左目はカラーコンタクトだったんですね」

「外す前に気づいたか」

「瞳の輪郭で。これくらい気づかないと佳奈美に馬鹿にされますからね。観察力が無いって」

「なんともスパルタだな、うん」

 コンタクトを外した先輩はそう言ってにやりと笑う。

 外した左目の色は緑色。

 右目の濃茶色と全く違う。


「オッドアイだったんですね」

「不気味かい」

「単なる個性ですよ。それに隠すよりは今の方が似合っています」

 先輩はふっと笑う。

「世の中が皆朗人みたいだと楽なんだがな」

 そして左手の掌を上にして前に出した。

「簡単な手品だが解説はしないぞ。手品の種明かしなんて悲しいものだからな。では、火球(ファイアボール)


 先輩の掌の十センチ位上にふっとオレンジ色に輝く物体が出現する。

 離れている僕まで熱さを感じる。

「これは?」

「まわりは気にしなくていいぞ。見ようと思わなければ見えない、そんな手品だ」

 オレンジ色の球は次第に白く輝いていく。

 熱もかなり感じる。

 真っ直ぐ見ると顔に熱さを感じるほどに。


 火球は出現と同様にふっと姿をかき消した。

「ま、こんなものかな」

 何だったんだ、今の。

 思わず質問しようとする僕を先輩は手で制す。

「言っただろ。種明かしはしない」

 そう言って彼女はコンタクトを再びはめた。

 何だったろう、今のは。

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