第12話 保護者の哀愁
「確かに特別なお店で、佳奈美と雅にぴったりなのは理解できました」
「だろう」
「半分は皮肉です」
ここは寿司から焼き肉、ケーキまである何でもあり系食べ放題の有名店。
具体的に言うと『す●みな太郎』だ。
九十分食べ放題に携帯電話クーポン使ってドリンクバーサービス。
税抜き千九百八十円のコース。
「取り敢えず自由に持ってきて自由に食え。あとは自己責任な」
神流先輩の号令のもと、四人バラバラな夕食会は始まった。
取り敢えず僕はささやかにサラダと牛赤身、握り寿司を取ってくる。
先輩は既にサラダとドリンクバーでのんびりしている最中。
そして佳奈美と雅はまだ探索中の模様だ。
僕の分の肉が焼けてきた頃、二人が戻ってきた。
肉肉肉肉、ホタテ、イカ、野菜野菜野菜、ケーキケーキケーキという感じにどさっと戦利品を置く。
「取り足らないので追加行ってくるですよ」
「私もお供しますわ」
置いたまま出ていった。
これはまずい兆候だ。
取るのが楽しすぎて食べきれなくなる、食べ放題あるある問題だ。
僕はもう自分の分を取りに行くことを諦めた。
最早そんな余裕は無いだろう、そんな確信にも似た予感がひしひしと押し寄せる。
第二弾の補充をがっしり持って二人が帰って来た。
「さて、もう少し取り足らないので」
「ちょっと待て。まずはこれを消化してから」
二人を引き留める。
「ここはお残し厳禁。だからまずは二人ともこれ片付けて」
「はーい、わかったのです朗人先生」
「それはいいから、さっさと焼け」
何とかこれ以上の補充を阻止することに成功。
「このお肉は便利ですね。焼くと自動的に油がちゃんと出てきます。焦げ付き防止の加工でしょうか」
雅さん、それは脂の多い安いお肉だからです。
「うーん、寿司と焼き肉と綿菓子とケーキの食い合わせは良くない模様なのです」
だったら取ってくるな。
「でも楽しいですわ。こうやって好きな物を選んで焼いて、皆で食べて」
「それは正しいのです」
二人とも会心の笑みという奴を浮かべている、
こら僕、今の二人の笑顔に騙されるな。
まあそんな感じで我関せずの神流先輩以外三人で集中攻撃。
何とか山になっていた在庫を片付ける。
まだ僕の取り皿に焼き終わった肉がうずたかく積まれているけれど。
「それでは探索を再開するのです」
「あ、私も行きますわ」
二人で元気に出ていった。
あ、何か疲れが……
「まるでお父さんだな」
神流先輩がにやにやしながらそんな事を言う。
「一人で黙々片付ける姿に哀愁が漂っているぞ」
「そう思うなら手伝って下さい」
「太るからやだ」
おいおいおい。