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制裁の対象
『わたし、苛められて初めてわかったの』
『苛められるひとの気持ちが』
マリコはか細い声でこう言った。
『見て、このアザ。ひどいでしょ』
『わたし、苛められると萎縮してなにもできなくなるの』
『苛められて、一人になってやっとあなたの気持ちもよくわかったの』
『ボイスレコーダーで録音していたあなたを憎んでいたわ』
マリコのことを聞いてあげよう。それで救われることもある。
『わたしが、エリカのいないところであんなこと言わなければ。それを録音されなければ、わたしは、苛められずに済んだのにって。』
『でも、わたし自身もあなたに悪いことをしていたことに気づいていなかった。気づこうとも思わなかったし、その場が楽しければいいと思っていたの』
『でも、あなたは苦しんでいたんだよね。ごめんね』
瘡蓋からも嗚咽が聞こえる。
『だから、制裁を受けるのは当然だと思ったの。うあぁあん』
マリコは、誰もいない高架下で泣き始めた。
電車の通る音と泣き声が奇妙にも共鳴し、異様なハーモニーを奏でている。
わたしも体育館でのことを見ているし、これは本当の気持ちだと思った。
電車が過ぎ去ったところで、自責の念にかられているマリコに対し、こう呟いた。
『あなたは悪くない...あなたは悪くない!』
そして、川に向かって大声でこう叫んだ。
『制裁を受けるのはエリカだよ!』




