悪夢の始まり
氷のように冷たい眼差しでエリカはポケットから
ピンセットを取り出した
「みぃつけた。今日はどこからにしようかな~笑」
悪夢の始まりである
早くこの時間が過ぎ去って欲しい
そう思えば思うほど逆に時間が経つのが長く感じるのだ
怖くて…何もできない自分
心底弱い自分が嫌になると同時に、どうしてこのような
感情を持つ人間が目の前に、この世に存在するのか
と思い悲しくなる
蜘蛛の巣から抜けられない自分...
獲物を狙うエリカは、暗く薄暗い森林の奥に張り巡らされたクモの巣の真ん中にいる恐ろしい存在...
わたしは新学期の開始と同時に転校してきた中学生。
小学校の友達は誰もいない。
これから生きていく人生の中で、耐えるのは今だけだ
と都合の良い理由を探し、根拠の無い希望を持って生きている
ピンセットを持って、わたしの瘡蓋を剥がしていくエリカは心底楽しそうだが、わたしは苦痛でたまらない...
大声を出せば助けてくれると思っていたが、何度か周囲に意思表示をしても状況は変わらない。薄暗い森林で叫ぶ声は誰にも伝わらない。伝わっているかもしれないが、誰も助けてくれない。
状況は深刻になっていく...
わたしは独りぼっち...
同じクラスの仲間は皆、我関せずといった態度を露骨にする
皆、自分がかわいいのだ
そうやって自分が標的にされないようにするのは正しいことなのか...何も手を差し延べないことが果たして正しいことなのか。
エリカの取り巻きたちの悲鳴を聞きながら、カーテンを噛み締めてグッと堪える。森林の外に助けの声は伝わらない。
悲鳴がさらにエリカをエスカレートしていく
あまりの痛さに気を失いそうになる...
瘡蓋が剥がれると、エリカとその取り巻きたちは
満足そうな顔をして教室を出ていく。これが私の日常...
それから1週間が経過し、私の膿んでいた傷口は酸化し、凝固していく。
そして、また瘡蓋を剥がしてください と言わんばかりに凹凸になっていく
次の悪夢が忍び寄って来ることも知らずに…