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17.坑道攻略作戦

 僕はフィナと他の冒険者達と共に、坑道の魔物の討伐依頼に参加していた。

 集まった冒険者は数十人もいて、中々規模の大きな仕事だと言える。

 以前、魔導師として王宮に勤めていた時もこういう仕事はあった。

 多くは冒険者に依頼していたから、時間は経ってもその辺りは変わらないらしい。

 ここの冒険者達は、僕の事をすんなり受け入れてくれた。


「灰狼を倒したっていうあんたともう一緒に仕事ができるとは思わなかったぜ」

「今日は期待してるよ!」

「あ、ありがとう。がんばるよ」


 むしろ少し圧倒されそうだった。

 フィナ曰く、それなりの実力者が集まっているらしい。


「あなたが来てくれて助かるわ。正直、今回は数も多いと思うし」

「別に構わないよ。フィナは怪我はもう大丈夫?」

「ええ、おかげさまで。あなたに助けられたから擦り傷で済んだわ」

「そっか。それなら良かったよ」


 僕には放っておくという選択肢は、実のところなかった。

 五百年経ったと言われても、僕にとってはほんの一瞬にしか思えない。

 レイアみたいに別人のようになる事もないし、むしろ少しだけ考えに余裕ができたくらいだ。


(まあでも、一先ずは目先の事に集中しないとね)


 僕を含めて、魔導師は数人程度だ。

 後衛からの援護が基本となるけれど、いざ坑道内となれば道も狭くなる。

 場合によってはチームが別れるなんて事もあるだろう。

 けれど、坑道までの道のりは大所帯であるため非常に楽なものだった。

 基本的には前衛だけで何とかしてくれる。

 時折左右からやってくる魔物にも、誰かしら早く反応していた。


「《ブレイズ・ショット》!」


 一人の魔導師がそう言って魔方陣と共に魔力を練る。

 燃え盛る矢が作り出されると、それがやってきた魔物へと襲いかかる。

 僕はそれを見て学習していた。


(ああ、かなり簡略化してるな……それに魔方陣の描き方も結構違うね)


 一度見れば、大体の法則性は掴める。

 次に魔物がやってきたときには、僕は先ほどの魔導師と同じように魔法を使っていた。


「あれ、《失われし大魔法》は使わねえのか?」

「ああ、あれはね……」

「切り札だろう、切り札。灰狼クラスじゃないと使わないのさ」

「うん、そういう事」


 冒険者の問いかけに、別の冒険者が答えてくれたので頷く。

 切り札という話で通ってくれるのならむしろ好都合だった。

 《失われし大魔法》が使えるからといって、僕がフエン・アステーナであるとイコール関係にはならないようだ。

 正直、見た目が知られていないのも助かる。


「もうすぐ坑道だけど、坑道内の地図は持ってるわよね?」

「うん、さっきもらったのがあるよ」

「万が一はぐれた際の合流地点とか書いてあるから、なくさないようにね」

「分かった。気を付けるよ」

「入り組んだ場所じゃチームを分ける可能性もあるからな!」

「はぐれないように注意しろよ!」

「おめえが一番はぐれそうだけどな」

「何を!?」

「あははっ」


 坑道前でも冒険者達のノリは変わらない。

 馴染みやすい雰囲気があった。

 僕なら単独でも脱出はできると思うけど、むしろはぐれた場合のチームの方が少し心配だった。

 魔物の数も多いっていうし……。


(うん、はぐれないようにしよう)


 僕はそう決意する。

 森の奥地に、坑道の入り口が見え始めていた。


 ***


 森の中でレイアは一人、木の上に待機していた。

 フエンと別れてから早々にここで準備をしていたのだ。

 耳元には黒い線で繋がった魔石があり、それが口元まで伸びている。


「あー、あー、聞こえますか?」

『かぁー』

『――』

「はい、お返事ありがとうございます。えー、本日の作戦をお伝えしますね」


 レイアは他の二人の返事を受けて、淡々と説明を始める。


「今回の作戦は単純です。坑道内にいる魔物の掃除です」

『かぁー』

『――』

「良いお返事です。本来ならばこういう仕事はアルフレッドさんやグリムロールさんの担当なのですが、アルフレッドはまだお務めの最中です。その代わりに第一地区を守るのはグリムロールさんなので……今回はマスターとも面識のあるあなた方を選出しました」

『かぁー?』

『――』

「はい、その通りです。万が一……いえ億が一――いえ……兆が一でも私のマスターがたかがその辺りにある坑道の魔物にやられるという事は、京が一にもあり得ないと思いますが……ゼロではありません。この意味が分かりますね?」

『かぁー』

『――――』

「はい、まさにそうです。可能性をゼロにするためのあなた方――マスターに危険を及ぼすと思われる魔物は全て排除してください。もちろん、食い残しは必要です」


 マスターに疑われてしまいますからね、とレイアは付け加える。

 レイアの言葉に答えるのは、カラスのような鳴き声と重低音の金属が磨り減るような音。

 どちらもフエンが一度会った事がある者であり、《魔導要塞アステーナ》の管理者を務めている。


「では、それぞれ別のルートから侵入を開始。行動を開始してください」

『かぁー!』

『――――ッ!』

「ええ、期待していますよ。ヤーサン、ギガロス」


 二人の返事に、レイアがそう答える。

 第十六地区の管理者のヤーサンと、第二地区の管理者であるゴーレムのギガロスが坑道内へと侵入した。

管理者紹介を挟む予定だったのですが、そうなると割りとゆっくり過ぎる進み方なので、展開を少しだけ早めようかなと思います。

結構展開遅めなところがあるので、苦手な方はすみません。

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大賢者からアンデッドになったけどやることがなかったのでエルフの保護者になることにした
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