書き出し祭りの私のアレコレ。
●アレコレの前の挨拶。
どうもおはようございます、こんにちわ、こんばんわ。転生吸血鬼さんという作品で本を出しているちょきんぎょまるという隅っこ作家でございます。
今回は肥前先生の企画した『書き出し祭り』の第三会場に参加させていただきましたので、その件について感じたことや技術など、アレコレ書けたらなぁという感じでひとつ、結果発表前にさらさらと書いています。公開するのは結果発表後なんですが。
ちなみに書いてあることはあくまで私の私見であり、創作においては読み手も書き手も好き好みがあって絶対の正解ではないということは言っておきます。創作論は人それぞれですよ。
●参加経緯のアレコレ。
もともと、肥前先生が「書き出しの4000文字で面白いもの持ち寄って遊ぼうぜ!」的な企画をしてたのは知ってましたが、静観の構えでした。というかしてました。あの日、肥前先生がとんでもないことを言い出すまでは……。
肥前先生「え?ちょきんぎょ。先生も参加しますよね?」(〆切四日前)
聞いてないよ。
冗談だったらしいんですが、「びっくりして速攻でネタ五個くらい考えましたよ」と言ったら「え、じゃあ書けるよね?ドタキャンされて席余ってるからやって」とか言われたので引っ込みがつかなくなりました。おのれ。
そんなわけで制作日数は2日。雑工程で生み出されたのが今回の私の参加作品、「うちの姪が魔王をやってまして。」になります。
ありがたいことにそこそこ評価していただけたようですし、いくらかの読者さんからは「これはプロの人の作品ですね」と言っていただけたので、そこそこ技術的にはがんばれたかなという感じです。
連載版は……出せそうなら頑張る感じでひとつ。
★結果見た後の追記。
というか今見たら第三会場だと二位でしたね。ビックリだよありがとうございます。
●作品のアレコレ。
前述の通り参加が決まったのが締切ギリギリだったので、超雑工程になりました。
元々この作品の雛形はネタ帳にあったので、それを『書きながら広げていく』形で執筆しました。リアルタイムで設定の作成と執筆を同時に行ったので、参加決まって1時間くらいで3000文字ほどできました。
そのあと、書きながら考えた部分で冒頭に入れなくてはいけない情報や描写(姪ちゃんの見た目などはその最もたるところですね)を挿入する形になりました。
とにかく、締め切り前の肥前先生の負担をかけてはいけないと思ったので、早く早くということでフル回転でした。締め切り前の作家の力はすばらしいぞ(お目目ぐるぐる)
そんなわけで必然的に提出はドンケツちかくになり、参加は第三会場と相成りました。
もしこれを連載として続けるなら、おじさんの本職を活かした内政というか業務改革ものみたいになると思います。
●今回の作品の技術面アレコレ。
超高速工程でしたが、技術はいくらか詰めましたのでご紹介(というかそれを知りたいから書いてほしいと言われたのでコレ書いてます)
★同時進行
書きながら設定考えるアレです。ちょっと疲れますがノりさえすれば効率◎。特に書き出しに有効。書いてるうちにいろいろ定まってきます。
問題があるとすればこれ、書き終わったあとは必ず補正(推敲)が必要ってことです。書きながら設定が増えるので、「ああこの設定つけたなら冒頭の方でこういう布石打っとかないとな」というところはきちんと把握しないといけません。書けたー終わりーってできないのがツラいところ。
★世界観説明のスルー
そ ん な も ん 二 話 以 降 で え え や ん。
限られた文字数の冒頭で多くの人を惹き付けるための処置でした。
もちろん、いきなり世界観設定を語られる方が好きな読み手さんも多くいますので、このあたりは『好みの問題』です。
私の場合はこの手段を選んだ、それだけの話ですね。
★会話劇や独白によるキャラ立て
世界観設定を捨てて何したかったってコレだよ。
世界のことを知る前に、まず人を知って欲しかった。
というのも、『一人称視点』の性質上、常に地の文はそのシーンにいる誰かの独白であり、見えるものや会話の距離感は非常に近くなります。
荷物の持ち手や、案内人を信用出来ない旅を想像してみてください。不安でしょう?
まずは『この物語に登場する、つまり貴方が一番関わる案内人はこういう人ですよ』、『ヒロインはこんな子ですよ』ということを伝えることが大切だと思いました。
生きる人を好きになれれば、世界のことだって好きになれます。だってその好きなキャラクターが生きている世界ですから。
だからこそ、この書き出し祭りで私は世界観の説明をほぼゼロにまで削りました。
そんなわけで今回私が使った技術は究極的には『とにかくキャラを立てよう』ということに尽きます。世界のためのキャラではなく、キャラのための世界を、というのが私の基本方針でもありますので、ばっちり合ってましたね。
★人物名称の削除
さてさて、さっき人間的魅力がどうこうみたいな話をしましたが、そのわりにひとつの情報が欠落しています。
それが固有名です。山田太郎とか佐藤姫子みたいな感じのアレです。この作品、おじさんにも姪ちゃんにも名前がなく、お互いの呼び方も終始「姪ちゃん」と「おじさん」です。
これにはふたつくらい理由がありまして、まず大きなものが『一話』だからです。
基本的に情報というのは整理しないと頭に入りません。
ある小説を読めばその中の人物や世界観を『覚える』。
楽しければ覚えやすい。しかし、覚えるのは間違いなく『労力』です。
小説を読むという行為は、実は勉強と大差ないのです。
なのでその労力を減らし、楽しい部分をなるべく多くするために、名前という情報は削りました。
名前は楽しい楽しくないというよりはただの情報で、それよりは会話劇や描写、冒頭終盤のヒキによるこれからのワクワク感などで盛り上げて、「この子たち面白い、これからどうなるんだろう」と思ってもらった方が、魅力として強いからです。名前は二話以降でいいよね。
あともうひとつの理由は、『僕が第三会場だから』です。これだけで『あーなるほどなー』と思った人は情報の管理が結構得意な気がします。
説明しますと、この書き出し祭りは相当数の作品が参加しました。
第三会場まで読む、それだけでかなりの作品の冒頭を読むことになります。中には第一だけ読んだとか、第二で力尽きたわ〜という人も多くいました。個人的な見解というか予想ですが総投票数でいえば間違いなく第一会場が多くなると見越しています(逆に第三から読む人もいたようですが)
これの何が問題って、ひとつの作品を通しで数十話読むならともかく、数十作品の『新しい情報』を読者さんの頭に叩き込まれることになることです。世界観、人の名前、キャラの性格。そういった情報がとても多い上に、作家が違うために書き方も違ってきて、その緩急に脳が振り回される。
なので僕の作品は、そういった『情報の密度』を極力落とし、疲れない作品にしようと思いました。
ステキな作品の熱意は楽しいものですが、疲れている人もいるかもしれない。そういった人達が、ただ、笑ってくれる。楽しんでくれる。そして、「じゃあもう少し読むか」と思ってくれる。僕にとって、狙ってたのはそこです。やっぱりみんないいもの書いてると思うので、読んでほしかったので。箸休め的な。
世界観の説明をしなかったことも、少しでも情報の密度を落とそう考えたという部分も含みます。
第一会場に参加していたらもう少し違う書き方をしていたか、あるいは違う作品を書いていたと思います。
ちょっと純粋な技ではないので邪道と思われるかもしれませんが、場所によって書き口を変えてみることも大切だよ、ということでひとつ。
実際、送る賞や狙っているところ、在籍しているレーベルさん次第で書き方を変えるのも大切な技術なので、単純な作品の質を良いものにする以外にも、周りを見てどんなものを書くか決めるというのもアリ、だと思ってもらえれば。
★結果見た後の追記。
やっぱり第一が一番投票多かったですね。
●書き出し祭りについて思ったアレコレ。
めっっっっっっちゃ楽しかったです。
めっっっっっっっっっっっっちゃ疲れましたが(主にフル回転した頭と精神が)
個人的には「早い順に会場分けするね」というのは参加者の筆の早さがある程度出るので悪くないと思いました(私は参加決めたのがギリギリだったので早かれ遅かれ第三会場でしたが)
肥前先生も言っていましたが、書き出しはとても大事な部分ですが、書籍化作家にも書き出しが苦手という人はいます。
なにより、投票はするけど表明は後でね、という匿名性がいわゆる『作家読み』や先入観の防止にもなり、かなり対等な土俵でワイワイ祭りになったんではないかなと思います。
個人的には参加人数の多さゆえ、第三会場まで辿り着く人間がいない可能性があるという意味では、第一がやっぱり一番読まれるだろうなーというのはありました。
やはり早筆isパワー。筆が早いに越したことないよね、プロでもアマでもね。
魔境具合はどこも同じような感じだったので、置いておきましょう。どの会場にも書籍化している、していないに関わらず上手い人ばかりでしたから。
企画としての総評は、書き手の視点に立って公平性を置いた、きっちりとした企画だと思います。肥前先生、ありがとうございました。
●最後に。
そもそも肥前先生と仲良しで、え?参加するよね?とか言われなかったら参加しなかった企画でしたが、参加した感想としてはとても楽しかったです。締切がいきなりハザード状態でしたが。
書き出し、というのは連載作品をやる上での『つかみ』の部分であり、芸人と同じでいきなりスベるとツラいので、多くの人が学ぶところが多い企画だろうにゃーと思いました。
その上で、私が使った技術的な話が誰かの役に立てばなーと思い(Twitterでちらっと聞いてみたら意外と需要あったっぽいので)、今回はさらさらっと書かせていただきました。
最後に、この企画を立ち上げてくださった肥前先生に感謝と、第三会場で私の作品を読んでくださった方に感謝を。これ書籍化作家のだよ!って予想した人、当たっております。おめでとうございます。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
次は私の作品に触れてもらいたいですね。