17
朝、ぼうっとした頭で目を覚ました俺は、まだ薄明るい空の光が淡く薄いカーテンの隙間から入り込む様を見つめる。
それはまるで繰り返し見たあの夢の景色のように白く霞む光に見えた。
仰向けになったまま、その差し込む白い光を見つめながら、何故か両目から流れてきた涙を隠すように両腕で覆う。温かな涙が冷たくなって耳の辺りからぼろりと零れ落ち、枕を伝って首の後ろや、耳たぶに零れ落ちるのを感じて、真っ白な頭のまま、ずっと涙をこぼしていた。
涙は俺の意思など関係なくただただ零れ落ちて、それは頭で考えるような意味のあることではなかったけれど、俺は、その時、何かを諦めたのだと思う。
……今は、まだ一人では生きていけない子供で、……それはいいようの無いほどに悔しかったけれど、しがみつくことそのものが、ガキの証明のようなものであるとするなら、その行為自体がより悔しいことのように思えた。
―-俺がガキだからこうして引きずられることも、
……せめて、自身の意思で、それを選択するという事実だけは、自身の中に持とうと思った。
そう決めると、ぐっと瞳に力を込めて、次いでに腹筋にも力を込めて身体をぐっと起こすと、久しぶりに大きく伸びをした。
……俺が俺の意思で。
選ぶことだ
そう、思えた時、心が強くなれた気がした。
伸びをして涙をぬぐえば、一番に会いたい人がいる。俺は、にっと笑うと、バッと立ち上がり、慌てて寝間着にしている短パンとTシャツを外用のものに替えて、薄手のスポーツウエアを羽織ると、ばあちゃんを起こさないように部屋を静かに出る。玄関でスニーカーに足を乱暴に突っ込んで外に出た。
まだ薄明るい外に出て、軽くストレッチをする。……俺は知っていた。運動好きの愛美は、この時間帯はお気に入りのコースを走っているだろうことを。




