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朝の工場は、ひんやりしていて。朝の薄闇が明け始める頃、ふらっと、来てしまった俺は、自然と、あいつの場所に行っていた。
意識のある自動車、由宇哉を、停めた場所へ。
ぼんやりとした窓から漏れた薄青い光に、照らされたそいつは、気持ちよさげに眠っていた。(俺には、あの子、小百合のように、こいつの表情までは見れないけれど、こいつは、自動車のくせに気持ちよさげにいびきをかいていたから、寝ているとすぐわかる)
特にこいつを起こそうとは思えなかった。……ただ、こいつのバンパーに背を預けて、知らず、目を閉じていた。
——こいつの寝息を聴いていたら、知らず、そうしていた




