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75.まるでひっくり変えるような 全てが変わってしまうかのような

 「ん、じゃ、僕からな?」


 そう、愛美は、茶目っ気を滲ませる瞳で少しだけ瞳をすがめて笑うと、すっ、と、立ち上がり、先にカーキ色の短パンをするりと足元に落とすと、


 そのまま、ぐっと身体をそらせて、黄色のTシャツをまるで生まれたばかりのセミが薄皮を剥ぐようにすんなり脱ぎ捨てると、藍色のスクール水着の姿になって、脱いだ服をそれぞれきっちりと畳み、奥まったところに綺麗において、


 声を失ったまま固まったように彼女を微動だにすることも出来ず見ている俺の目の前で、ぐっと身体を逸らすと、そのまま、とんっ、と、飛んだ。


 すぅ、とまるで吸い込まれるように彼女が川に落ちていく。


 その姿が、あんまりにも美しくて、俺は彼女の全てが綺麗に見えて、そして全てが止まったように見えた。


 やがてエメラルドグリーン色に見える水面がふわりとゆれて、彼女が水面上に顔を出す。


 濡れた髪が小麦色の肌に貼りついて、きらきらとしていた。


 彼女の漢らしいことばかり言う小さな唇が、俺に向かって言う。


 大きなアーモンドアイがきらきらと面白げに光に反射する。


 俺は、怖さを全く感じない。ただただ、彼女の魔力に引き込まれるように、そのまま急いで身に着けていたものを剥ぐと、海水パンツのみになって、そのまま、川に向かって滑るように足元から飛び込んだ。


(※人が飛び込める限界の高さは、3~4メーターらしい。高さ15メーターからは、水はコンクリートのような硬さになり、24から34メーターで死が見えてきます。危険なので十分にお気をつけて。因みに飛び込む時は腹ばいではなく、足を出来るだけ閉じ、足から着水することが推奨されているようです。くれぐれも安全にはお気をつけて。※可能であれば、救命胴衣など浮力のあるものを身に着けて行われることを推奨します)


 飛び込んだ時、まるで全てがひっくり変えるような、変わってしまうような、浮遊するような、ふわっとした妙な感覚があって、俺は、ゆらゆら気持ちが揺れる思いがする。


 透明な水面が俺に迫ったと思ったときには、俺はもう、輝くようなエメラルドグリーンの水の奥深くにぶわりと放り込まれるように投げ出されていた。


 そのまま、夢心地で、水面上に向かって浮き上がる。


 ブワッと浮き上がって初めて見たような気がした景色は、抜けるような夏の澄んだ青空と、きらきらしたトロっとした光沢の水面と、対面する小麦色の肌とアーモンドアイの愛美の笑顔だった。

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