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52.お弁当と有難うと

 田邊さんと、私は、清流傍に設置されている、石造りのベンチと机に座って、お弁当を食べることにして。少しだけ緊張したままに、私は、お重を取り出す。サンドイッチと迷ったけれど、……なんとなく、おにぎりの方が田邊さんは好きなような気がしたから、今回は、お重にした。二段になっていて、上の段には、おにぎりを敷き詰めて、下の段には、卵焼きとか、空揚げとか、味がしみ込んだ煮物とか、きんぴらとかサラダとか春巻きとか肉団子とか……実は、食いしん坊な私の好きなおかずばかりうきうきしながら詰め込んだのは秘密だ。


 友達とピクニックに行くみたいで、幼い頃にそんな風なこと全くする機会がなかった私は、お弁当を作るとき、すごく楽しかったんだ。喜んでもらえるといいなぁって、思いながら、お弁当を作るときは、本当に幸せだった。誰か食べてくれる人の為に作るごはんは、やっぱりとても好きで、こうして、食べてもらえる人と一緒に食事をすることも久しぶりで、私は、すごく嬉しい気持ちになった。


 田邊さんは、素直に、感嘆してくれた。随分お腹すいていたのかな?すごくおいしそうに食べてくれるから、凄く幸せな気持ちになる。


 田邊さんは、おにぎりをもぐもぐしながら、私にふっと語り掛けた。


 「また来ような」って


 私も、頷いた。


 食事を終えると、田邊さんと一緒に百合姉さんと、私が落ちてしまった場所を見つめて、田邊さんが、凄く透明な目で、もう使用禁止の札が掛かっている釣り橋とそこから見える清流、奥の深い森を見つめてた。その姿が、少し、百合姉さんと重なって、私は不安になって、ぐっと、田邊さんの腕を引くと、田邊さんがん?と驚いたような顔をしたので、無事だったと思い、安心する。


 心配していたような大変な事態にはどうやらならなくて、私は、本当に、本当に、物凄く安心しました。


 百合姉さんの幽霊は、ここにはもう居なくて、……きっと、弟さんの雪くんと、ちゃんと一緒にいるんだと思う。


 幸せに笑っていてほしいなと思った。すごく、勝手だけれど、そう願って。


 百合姉さんが、自動車の意志となっていた時も、今も、私は、まだ不思議なままだけれど、私は、自動車の意志となった百合姉さんと、言葉を交わせた時、本当に、すごく、……救われた気がしたから。……だから、私は、救われたから。有難う御座います。って、そう、伝えたかったけれど、でも、伝わっていると思っても良いですか。


 伝わっていると良いなと思います。

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