43.お互い様
彼女は、じっと下に顔を俯けている。彼女の瞳の影が強まったように思う。
僕は、何故だか、とても不安に思えてくる。……彼女は、何故、こんなに暗い瞳をしている?
「女の子は、ある日、写真を大事そうに見つめるその方を見つめて言いました。『百合姉さん、もし、幽霊を見れたり、それに憑かれたりする人間が、目の前に居るとしたら、百合姉さんは、どうしますか?』その方は、大きく目を見開いて、瞳を輝かせます。彼女はなにも口にしなかったけれど、彼女の瞳を見て女の子は、彼女の気持ちを解ってしまいました。『僕、なってあげましょうか?あなたの弟さんに』」
小百合ちゃんは、そう言った後に、田邊の方を向いて。彼女がじっと見つめていると、田邊は、困ったように、小百合ちゃんに目を合わせて。
「……僕は、君を責めたりしないよ。……なんとなく、解っているつもりだ。君がここに行きたいと言った理由、……僕と、こいつと共にここに来なくてはいけなかった理由」
そうして、田邊は、ぽんっと、小百合ちゃんの頭に軽く手を乗せた。
「……だから、君は、そんなに今にも、泣きそうな顔をしなくたって良いよ。……僕の過去だって、大概なものだし、お互い様だ。さあ、もう少しで、君が行きたいと言った場所に着くよ」
田邊は、車の僕を、崖に広くつくられた駐車スペースに止めた。そこからは、小さな滝が見える。奥の方に下に降りれる階段があり、その下には、綺麗な清流が流れていた。清流には、随分古びたつり橋が掛かっている。




